公害防止管理者の過去問|令和3年 公害総論 問11 問題と解説

公害防止管理者の過去問|令和3年 公害総論 問11 問題と解説
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問題11

海洋環境の現状に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 海上保安庁の「平成31年/令和元年の海洋汚染の現状について」によると、汚染原因件数の割合が最も高かったのは、油であった。
  2. 環境省の「平成30年度海洋環境モニタリング調査結果」によると、底質、生体濃度及び生物群集の調査において一部で高い値が検出されたが、全体としては海洋環境が悪化している状況は認められなかった。
  3. 近年、マイクロプラスチックによる海洋生態系への影響が懸念されている。
  4. マイクロプラスチックとは、5μm以下の微細なプラスチックごみのことである。
  5. マイクロプラスチックに吸着しているポリ塩化ビフェニル(PCB)等の有害化学物質の量等を定量的に把握するための調査が実施されている。

問題11の解答

正解は「4」です。

問題11の解説

この問題は、海洋汚染・海洋環境のモニタリング結果と、マイクロプラスチックに関する基礎知識をきちんと理解しているかを問うものです。特に、マイクロプラスチックの定義(サイズ)をミクロン(μm)とミリ(mm)で取り違えさせる典型的なひっかけです。以下、公的資料に当たりながら、各選択肢が正しいかどうかを確認します。

選択肢1→正しい

海上保安庁の「平成31年/令和元年の海洋汚染の現状について」によると、汚染原因件数の割合が最も高かったのは、油であった。

根拠:海上保安庁の「平成31年/令和元年の海洋汚染の現状について」(海洋汚染事故の統計)

この資料では、汚染原因別の件数を集計しており、汚染の原因となった物質のうち油によるものが最も多いとされています。また、海上保安庁の長期統計でも、「海洋汚染事案の原因物質として、油が件数の大部分を占める」という傾向が繰り返し示されています。

選択肢2→正しい

環境省の「平成30年度海洋環境モニタリング調査結果」によると、底質、生体濃度及び生物群集の調査において一部で高い値が検出されたが、全体としては海洋環境が悪化している状況は認められなかった。

根拠:環境省「平成30年度海洋環境モニタリング調査結果について(概要)

この資料の「まとめ」に次のように記載されています。

・底質調査では、一部の項目で平成20年度調査と比較して高い値が検出されたが、全体としては概ね同程度又は低い値であった。
・生体濃度調査では、一部において高い濃度が得られたが、全体的な傾向としては過去の調査とほぼ同等の値であった。
・生物群集調査では一部の測点で貧酸素の影響がみられたが、その他の測点では海洋環境が悪化している状況は認められなかった。

つまり、「一部で高い値」は見受けられたものの、「全体として悪化しているとは言えない」という見解です。まさに選択肢2の内容と一致します。

選択肢3→正しい

近年、マイクロプラスチックによる海洋生態系への影響が懸念されている。

根拠:環境省「一般向けマイクロプラスチック発生抑制・流出抑制対策リーフレット

同ページでは、次のように説明されています。

海洋等におけるプラスチックごみの中でも「マイクロプラスチック」と呼ばれる 5mm未満の微細なプラスチックごみ について、近年、生態系への影響が懸念されています。

「マイクロプラスチックによる海洋生態系への影響の懸念」は、環境省が公式に発信している内容そのもので 正しい 記述です。

選択肢4→誤り:正解

マイクロプラスチックとは、5μm以下の微細なプラスチックごみのことである。

同じく環境省の上記ページや資料では、マイクロプラスチックについて次のように定義されています。

一般向けリーフレットでは、「マイクロプラスチック」と呼ばれる 5mm未満の微細なプラスチックごみと説明されています

  • 正しい定義:5mm(ミリメートル)以下(未満)
  • 選択肢の記述:5μm(マイクロメートル)以下

1 mm = 1000 μm なので、5 mm = 5000 μm。5 μm は 0.005 mm に過ぎません。つまり、選択肢4は「定義を 1000 分の 1 に縮小してしまっている」ため、明確に誤り です。

選択肢5→正しい

マイクロプラスチックに吸着しているポリ塩化ビフェニル(PCB)等の有害化学物質の量等を定量的に把握するための調査が実施されている。

根拠:「海洋プラスチックごみ問題の動向及び対策について

マイクロプラスチックそのものの分布、それに付着・吸着している PCB などの有害化学物質の量を定量的に把握する調査が、すでに実施されていることがわかります。

問題を解くポイント

  1. マイクロプラスチックの定義は「5mm以下」
    • 「μm(ミクロン)」と「mm(ミリ)」の取り違えは頻出のひっかけ
    • 「micro という名前だけ見て“μm”と思い込まない」ことが重要です。
  2. マイクロプラスチック問題は公害総論の定番テーマ
    • 定義(5mm以下)
    • 一次マイクロ(スクラブ剤・マイクロビーズ等)/二次マイクロ(大型プラの破砕)
    • PCB 等の有害物質を吸着 → 食物連鎖 → 生態系影響の懸念
  3. 統計・報告書の文章を“そのまま”問う出題が多い
    • 海洋環境モニタリング調査の「一部高いが全体としては悪化していない」
    • 海上保安庁による「汚染原因として油が最多」
      → 一度原文を読み、「よく出るフレーズ」として覚えておくと有利です。
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本記事の監修者

ISEED編集部は、環境技術、環境倫理、環境に関する資格について読者に有益な情報を調査・配信しています。記事制作においてリサーチ、構成、ライティング、編集、グロースハックの仕組みを適切に設計することで読者にわかりやすい文章を作ることを心がけています。

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