
公害防止管理者の過去問|令和3年 汚水処理特論 問8 問題と解説
問題8
膜分離法に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 精密ろ過は微細な懸濁粒子や細菌などの除去に用いられる。
- 限外ろ過膜は、分子量1000~100万程度の水溶性の高分子物質や微細な懸濁粒子などの除去に用いられる。
- 電気透析法は溶解塩類の除去に用いられる。
- 電気透析法では、水溶性電解質でないコロイド質や有機物は除去できない。
- 海水淡水化などで用いられる多段式プロセスでは、前段逆浸透膜モジュールの膜透過水を後段逆浸透膜モジュールに通すことで、より多くの膜透過水が得られる。
問題8の解答
正解は「5」です。
問題8の解説
この問題は、膜分離法(MF・UF・電気透析・RO)の「何を除去できるか」と、ROシステム構成(多段・多パス)の基本を正しく理解しているかを問うものです。1〜4は基本事項として正しく、5だけが“多段(multi-stage)”の意味を取り違えています。
1. 精密ろ過は微細な懸濁粒子や細菌などの除去に用いられる。
正しい。精密ろ過(MF)は粒子レベルの分離で、微細な懸濁物質などの除去対象として整理されています。国土交通省の膜処理技術資料でも、MFは粒子(0.01〜10µm程度を対象とする区分)を分離対象とする膜として示されています。
2. 限外ろ過膜は、分子量1000~100万程度の水溶性の高分子物質や微細な懸濁粒子などの除去に用いられる。
正しい。限外ろ過(UF)の対象は、概ね「分子量1,000〜(数十万〜数百万)程度」の高分子や微粒子である、という整理は標準的です。国交省資料にUFの分離対象として分子量域(1,000〜3,000,000)などが示されています。
3. 電気透析法は溶解塩類の除去に用いられる。
正しい。電気透析(ED)は、イオン交換膜と電場で溶解しているイオン(塩類)を移動させ、脱塩・濃縮する技術です。環境省系の資料でも、脱塩処理方式として「逆浸透膜法、電気透析法」等が挙げられ、電気透析により脱塩を行う例が示されています。
4. 電気透析法では、水溶性電解質でないコロイド質や有機物は除去できない。
正しい(試験の基本理解として)。電気透析は基本的に「イオン性物質(電解質)」を対象に動かす仕組みです。したがって、非イオン性(電解質でない)成分は膜を通って移動しないため、塩(イオン)と非イオン性有機物を分けられる、という説明がなされています。 (※現実の運転では有機物による汚染(ファウリング)が問題になり得ますが、「除去原理として主対象はイオン」である点がここでは重要です。)
5. 海水淡水化などで用いられる多段式プロセスでは、前段逆浸透膜モジュールの膜透過水を後段逆浸透膜モジュールに通すことで、より多くの膜透過水が得られる。
誤り。ここは言葉の混同が起きやすいところで、ポイントは次の区別です。
A. 多段(multi-stage)=「回収率(得られる水の割合)を上げる」ための構成
多段ROは、一般に第1段で出た“濃縮水(concentrate)”を次段の給水にして、システム全体の回収率を上げるために用いられます。DuPont(膜メーカー)の技術資料でも、多段システムはより高い回収率を達成するために用いられると説明されています。
B. 多パス(double-pass/permeate-staged)=「水質をさらに良くする」ための構成
一方で、「前段の透過水(permeate)を後段に通す」構成は、一般に“二段(double-pass)”=水質向上目的として説明されます。DuPontの技術マニュアルでも、透過水を次のROの給水にする透過水ステージ(double-pass)は、典型的に「標準の透過水質では不十分な場合」等の理由で採用するとされています。
つまり、選択肢5は「多段(回収率を上げる話)」と言いながら、内容は「透過水を次段に送る(多パス=水質向上の話)」になっており、さらに「それで透過水が“より多く”得られる」と結論づけている点が不適切です。したがって、5が誤りです。
問題を解くポイント
- MF=粒子・細菌など“粒子サイズ”の除去、**UF=高分子・微粒子(分子量1,000級〜)**という“守備範囲”を押さえる。
- 電気透析(ED)はイオン(塩類)を動かして脱塩。非イオン性物質は基本的に対象外。
- ROは構成用語が頻出:
- 多段(stage)=濃縮水を次段へ、回収率アップ
- 多パス(pass/double-pass)=透過水を次パスへ、水質アップ


コメント