
公害防止管理者の過去問|令和7年 公害総論 問9 問題と解説

問題9
これまでに実施されてきた自動車に係る移動発生源対策として、誤っているものはどれか。
- ディーゼル重量車に対する排出ガス規制強化
- 軽油中の窒素分の低減
- 窒素酸化物及び粒子状物質の総量削減
- 自動車税のグリーン化
- 交通流の分散・円滑化
問題9の答え
正解は「2」です。
問題9の解説
この問題は、「自動車に係る移動発生源対策として、実際に行われてきた政策かどうか」を問うものです。ポイントは、燃料対策でターゲットにしてきたのは「硫黄分」であって「窒素分」ではない、というところです。では選択肢を一つずつ見ていきます。
選択肢1
ディーゼル重量車に対する排出ガス規制強化
これは、非常に代表的な自動車対策です。
- 我が国では、ガソリン車・ディーゼル車ともに、段階的に厳しい排出ガス規制(いわゆる昭和53年規制 → 平成10年規制 → 平成17年規制 → ポスト新長期規制 → 平成28年規制 等)が導入されてきました。
- 特にディーゼル重量車については、NOx・PMを大幅に削減するために、DPF(粒子状物質フィルタ)や尿素SCR等の装置を前提とするレベルまで規制が強化されています。
環境省や国交省資料でも、「重量車排出ガス規制の強化」が自動車起源大気汚染対策の柱の一つとして何度も示されています。実際に行われている対策なので、正しい記述です。
選択肢2(これが誤り)
軽油中の窒素分の低減
ここがひっかけです。
燃料対策として日本で徹底的に行われてきたのは「ガソリン・軽油中の硫黄分の低減(脱硫)」です。2005年頃から「サルファーフリ―(10 ppm以下)」のガソリン・軽油が導入され、それによりディーゼル車の脱硝・PM対策装置が正常に働ける環境を整備しました。
一方で、「軽油中の窒素分を政策的に低減させる」という形での大規模な規制・対策は行われていません。
NOx対策は主として
- エンジン技術(EGR等)
- 排ガス後処理装置(尿素SCR、NOx触媒など)
- 交通対策(交通量抑制、流れの円滑化)
などで実施されており、「燃料中窒素分を直接規制する」方向ではありません。
したがって、「軽油中の窒素分の低減」は、実際の主要な自動車公害対策としては位置付けられておらず、誤りです。
選択肢3
窒素酸化物及び粒子状物質の総量削減
これは、いわゆる自動車NOx・PM法(自動車NOx・PM総量規制)に対応する内容です。
「自動車NOx・PM法」(正式名称:自動車NOx・PM法=自動車NOx・PM法に基づく対策)は、大都市地域(首都圏・近畿圏・中京圏など)で自動車起源の NOx と PMの総量を削減することを目的とした法律です。車種規制・自動車使用過程対策・交通流対策等を組み合わせ、「総量削減」の考え方で進められています。実施されている対策なので、正しい記述です。
選択肢4
自動車税のグリーン化
これは、環境配慮型車両(低公害車・低燃費車)を優遇する税制のことです。
環境省・国交省・財務省等が連携して、「自動車税のグリーン化(環境性能割など)」や「エコカー減税」といった制度を通じて、燃費の良い車・排ガス性能の良い車の普及を促す税制措置を行ってきました。自動車に係る環境対策として実施されてきた典型例であり、正しい記述です。
選択肢5
交通流の分散・円滑化
これは、「移動発生源対策」のうち、交通対策に分類されるものです。
- とくに都市部では、
- 渋滞の解消
- バイパス整備
- 公共交通機関の利用促進
などにより、
1台あたりの排出時間を短縮し、NOxやCO₂の排出量を減らすことが狙いです。
これも実際の交通環境対策として位置づけられており、正しい記述です。
問題を解くポイント
- 燃料対策=「硫黄分」低減がキーワード
- 「サルファーフリーガソリン・軽油」
- 「硫黄10 ppm以下」
などの語と結び付けて覚えると、
「窒素分?」と出てきたときに違和感を持てます。
- 自動車対策は、大きく3本柱で整理
- ① 排出ガス規制(車そのものの性能向上)
- ② 燃料対策(脱硫など)
- ③ 交通対策・税制(交通流、需要、車種選択の誘導)
残りの2が怪しい、と当たりをつけられます。 - 「聞いたことがない具体策」は要チェック
- 公害防止管理者試験レベルでは、
知識としてほとんど出てこない用語(軽油中窒素分低減など)が急に出たときは、
「ひっかけの可能性が高い」と疑うクセをつけておくと、正答率が上がります。
- 公害防止管理者試験レベルでは、


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