
公害防止管理者の過去問|令和6年 公害総論 問7 問題と解説

目次
問題7
大気中の二酸化窒素(NO2)の環境影響及び健康影響に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 光化学オキシダントの生成に関わる。
- 植物への影響がある。
- 粒子状物質(PM)の生成に関与する。
- 健康影響は一酸化窒素(NO)より小さい。
- 酸性雨の原因となる。
問題7の答え
正解は「7」です。
問題7の解説
この問題は、「NO₂が大気中でどんな役割・悪さをしているか」と「NOとNO₂の健康影響の違い」がポイントです。選択肢を一つずつ確認していきましょう。
選択肢1
光化学オキシダントの生成に関わる。
そのとおりで正しいです。
NO₂は太陽光(紫外線)を受けて分解し、NOとO(酸素原子)になります。このOが酸素分子O₂と反応してオゾン(O₃)をつくります。さらにVOC(揮発性有機化合物)などと絡んで、光化学スモッグの原因となる光化学オキシダントが生成されます。
したがって、NO₂は光化学オキシダント生成のキープレーヤーであり、この記述は正しいです。
選択肢2
植物への影響がある。
これも正しいです。NO₂は一定濃度以上になると、葉の黄化・壊死、成長阻害など、植物に対して悪影響を与えます。植物は気孔からガスを取り込むため、NO₂などの大気汚染物質が高濃度になると、光合成能力の低下や収量の減少などが起こり得ます。
したがって、「植物への影響がある」は正しい記述です。
選択肢3
粒子状物質(PM)の生成に関与する。
これも正しいです。
- NO₂やNOをまとめてNOxと呼びますが、大気中で酸化されていくと硝酸(HNO₃)を生じます。
- 硝酸は、アンモニア(NH₃)などと反応して硝酸アンモニウム(NH₄NO₃)という二次粒子(PM₂.₅の一部)を形成します。
- つまり、NO₂は二次粒子(硝酸塩粒子)の生成を通じてPMの形成に関わっています。
よって、「PMの生成に関与する」は正しいです。
選択肢4(誤り:ここが正解)
健康影響は一酸化窒素(NO)より小さい。
これは 誤り です。
- NO(窒素一酸化物)は常温では比較的反応性が低く、自身の毒性はNO₂と比べれば小さい(低い)とされています。
- 一方、NO₂は刺激性の強いガスであり、
- 気道刺激
- 肺機能の低下
- 呼吸器疾患の増悪
など、NOよりも明確に強い健康影響を持っています。
したがって、正しくは「健康影響は NO より大きい(強い)」であり、問題文の「NOより小さい」は逆です。ここが誤っているため、本問の正解肢は4となります。
選択肢5
酸性雨の原因となる。
これも正しいです。
- NO₂などのNOxは、大気中で酸化されて硝酸(HNO₃)になります。
- この硝酸が雨や霧に溶け込むことで、pHの低い酸性雨の一因となります。
- 酸性雨の主な原因物質は、硫黄酸化物(SO₂等 → 硫酸)、窒素酸化物(NOx → 硝酸)の2つです。
したがって、「酸性雨の原因となる」は正しい記述です。
問題を解くポイント
- NOとNO₂の“毒性の強さ”を比べて覚える
- NO:比較的毒性は小さく、すぐにNO₂などに変わってしまう
- NO₂:刺激性・毒性が強く、健康影響上問題となる主体
→ 「健康影響で問題になるのはNO₂」と押さえておくと、選択肢4のような逆転表現に気づきやすくなります。
- NO₂の環境影響=3本柱
- 光化学オキシダント(オゾン)
- 酸性雨
- 二次粒子(硝酸塩PM₂.₅)
この“3役”がセットで頭に入っていると、大気汚染総論の問題がぐっと解きやすくなります。


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