公害防止管理者の過去問|令和3年 公害総論 問10 問題と解説

公害防止管理者の過去問|令和3年 公害総論 問10 問題と解説
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問題10

公共用水域の水質汚濁の現状に関する記述として、誤っているものはどれか(環境省平成30年度公共用水域水質測定結果による)。

  • 海域では、健康項目の環境基準を超過した地点はなかった。
  • 河川、湖沼、海域のうち、健康項目の環境基準達成率が最も低いのは河川であった。
  • 環境基準を超過した地点数が最も多かった健康項目は、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素であった。
  • PCBに関しては、平成29年度及び平成30年度ともに、環境基準を超過した地点はなかった。
  • カドミウム、鉛、六価クロム、ひ素、総水銀のうち、環境基準を超過した地点数が最も多かった健康項目は、ひ素であった。

問題10の解答

正解は「3」です。

問題10の解説

この問題は、環境省が公表した「平成30年度公共用水域水質測定結果」に基づき、公共用水域(河川・湖沼・海域)における健康項目の環境基準達成状況を正しく理解しているかを問うものです。

あくまでも過去の情報をもとにした問題なので、環境省が公開している最新情報をチェックしてください。

選択肢1→正しい

  1. 海域では、健康項目の環境基準を超過した地点はなかった。

上記報告書の「3.測定結果の概要 (1) 健康項目の環境基準の達成状況」に次のように記載されています。

環境基準値の超過は、カドミウム、鉛、砒素、1,2-ジクロロエタン、セレン、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素、ふっ素、ほう素の8項目について、のべ52地点でみられ、水域群別では、河川が8項目のべ48地点、湖沼が3項目のべ4地点、海域については、超過地点なしであった(表2)。

海域では健康項目の環境基準超過地点はゼロ であることが明記されています。したがって、選択肢1は正しい 記述です。

選択肢2→正しい

  1. 河川、湖沼、海域のうち、健康項目の環境基準達成率が最も低いのは河川であった。
  • 超過地点数(水域別)
    • 河川:延べ48地点
    • 湖沼:延べ4地点
    • 海域:0地点

達成率は、「達成率 = 1 − 超過地点数 / 測定地点数」で求まりますから、超過地点が最も多い 河川が達成率は最も低い ことになります。したがって、選択肢2も正しい 記述です。

選択肢3→誤り:正解

  1. 環境基準を超過した地点数が最も多かった健康項目は、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素であった。

ここが本問のポイントです。報告書「表2 健康項目の環境基準達成状況(非達成率)」には、項目別の非達成率(超過地点数の割合)が示されています。

この表と巻末の「参考2-1 健康項目環境基準値超過地点一覧」から、平成30年度に超過が見られた健康項目(8項目)のうち、砒素(ひ素) が最も多くの地点で環境基準値を超過しています。硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素も超過はあるが、「最多」ではありません。

一方、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素が超過率トップになるのは 地下水質の方(概況調査)であり、公共用水域ではなく「地下水」に関する統計です。

すなわち、公共用水域(本問の対象):砒素が最多、地下水:硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素が最多という違いがあります。よって、選択肢3の記述は、地下水の話と取り違えた誤り です。

選択肢4→正しい

  1. PCBに関しては、平成29年度及び平成30年度ともに、環境基準を超過した地点はなかった。

PCB(ポリ塩化ビフェニル)は、健康項目として環境基準が設定されている物質です。平成30年度(本問対象年)では、先に見たとおり、PCB は含まれていません。これは平成29年度も同様です。

環境基準値の超過は、カドミウム、鉛、砒素、1,2-ジクロロエタン、セレン、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素、ふっ素、ほう素の8項目について、のべ52地点でみられ、水域群別では、河川が8項目のべ48地点、湖沼が3項目のべ4地点、海域については、超過地点なしであった(表2)。

従って、選択肢4は正しい 記述です。

選択肢5→正しい

  1. カドミウム、鉛、六価クロム、ひ素、総水銀のうち、環境基準を超過した地点数が最も多かった健康項目は、ひ素であった。

平成30年度に、健康項目のうち環境基準値超過が見られた金属類は以下のとおりです。

  • カドミウム
  • 砒素(ひ素)
  • セレン
  • ふっ素
  • ほう素

六価クロムや総水銀は 環境基準値超過なし と整理されています。これら金属類の中で最も超過地点数が多いものは 砒素(ひ素) であることが別の資料でも説明されています。「Cd・Pb・As・Hg」に限定しても As が最多という関係は変わりません。

したがって、選択肢5は正しい と判断できます。

問題を解くポイント

ポイント1:公共用水域と地下水を混同しない

  • 地下水:硝酸性窒素+亜硝酸性窒素 の超過率がトップ(農業・生活排水が原因)
  • 公共用水域:砒素・ふっ素 など自然由来・地質由来が多い

本問は「公共用水域」の統計なので、「硝酸性窒素が最多」は地下水側の話だと気づけるかどうかがカギです。

ポイント2:海域の「健康項目」はほぼ問題なし

多くの年度で、「海域の健康項目の環境基準超過地点はゼロ」という状況が続いています。これは試験でも頻出です。

ポイント3:金属類のなかでは「ひ素」が要注意

  • カドミウム:対策の進展により超過例は少数
  • 鉛:同上
  • 砒素(ひ素):自然由来で超過が多い

この「ひ素の多さ」は、公共用水域・地下水ともに重要な特徴なので、必ず押さえておきたいポイントです。

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本記事の監修者

ISEED編集部は、環境技術、環境倫理、環境に関する資格について読者に有益な情報を調査・配信しています。記事制作においてリサーチ、構成、ライティング、編集、グロースハックの仕組みを適切に設計することで読者にわかりやすい文章を作ることを心がけています。

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