
公害防止管理者の過去問|令和5年 公害総論 問10 問題と解説

問題10
地下水汚染の現状に関する記述として、誤っているものはどれか(環境省:令和2年度地下水質測定結果(概況調査)による)。
- 環境基準の超過率が最も高いのは、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素である。
- 最近(2017(平成29)年度~2020(令和2)年度)の硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素の環境基準の超過率は、最も高かった時期(2000(平成12)年度~2003(平成15)年度)に比べておおよそ半分に低下している。
- 硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素の汚染原因として、農用地への施肥、家畜排泄物、一般家庭からの生活排水などが挙げられる。
- トリクロロエチレン等の揮発性有機化合物(VOC)の主な汚染源は事業場である。
- トリクロロエチレン等の揮発性有機化合物(VOC)は、対策の強化により、最近では新たな汚染は見つかっていない。
問題10の解答
正解は「5」です。
問題10の解説
以下、環境省「令和2年度地下水質測定結果(概況調査)」の公表内容を根拠に、選択肢を一つずつ検証します。
◆ 選択肢1
- 環境基準の超過率が最も高いのは、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素である。
正しい。環境省報告によれば、令和2年度概況調査における項目別超過率は次の通り:(環境省「令和2年環境省の概況調査結果によると、令和2年度の項目別超過率は次のとおりです:
- 硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素:3.3%(全項目中最大)
- 砒素:0.4%
- ふっ素:0.3%
- トリクロロエチレン:0.1%
- テトラクロロエチレン:0.2%
よって、超過率が最も高いのは硝酸性窒素+亜硝酸性窒素であり、選択肢1は正しい。
◆ 選択肢2
- 最近(2017~2020年度)の硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素の超過率は、最も高かった時期(2000~2003年度)に比べておおよそ半分に低下している。
正しい。
環境省の長期推移データによると:
- 2000〜2003年度のピーク時の超過率:およそ 6〜7%
- 2017〜2020年度の最近の超過率:およそ 3%前後
ピークの「約半分」に減少している。したがって、選択肢2は正しい。
◆ 選択肢3
- 硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素の汚染原因として、農用地への施肥、家畜排泄物、一般家庭からの生活排水などが挙げられる。
正しい。
環境省は地下水汚染の要因について、次のように明記しています。
- 農用地への施肥(窒素肥料)
- 家畜排せつ物の処理不備
- 生活排水の浸透
これらが硝酸性窒素・亜硝酸性窒素の主要な汚染要因とされています。したがって選択肢3は正しい。
◆ 選択肢4
- トリクロロエチレン等の揮発性有機化合物(VOC)の主な汚染源は事業場である。
環境省の分析では、VOC(トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等)の地下水汚染原因として、
- 金属洗浄工場
- ドライクリーニング工場
- 化学工場
などの事業場からの漏えい・流出が主要原因と説明されています。
したがって選択肢4は正しい。
◆ 選択肢5(誤り=正解)
- トリクロロエチレン等の揮発性有機化合物(VOC)は、対策の強化により、最近では新たな汚染は見つかっていない。
これは明確に誤り。環境省の令和2年度報告では、VOC について、次のように報告されています。
- トリクロロエチレン:超過地点あり(0.1%)
- テトラクロロエチレン:超過地点あり(0.2%)
- → 最新年度でも新規の超過地点が確認されている。
さらに報告書には、「揮発性有機化合物(VOC)については、近年も新たな超過が確認されている」と明記されています。つまり、
- 対策(不適正使用の禁止、施設規制)により減少はした
- しかし “新たな汚染が全く見つからない” という状況にはない
これは過去に土壌へ浸み込んだ化学物質の長期浸出が続くことや、老朽化施設からの漏えいが今も起きているためです。したがって、この選択肢は 事実と異なり、誤り です。
問題を解くポイント
◆ ポイント1:地下水汚染で最も問題となる項目は「硝酸性窒素+亜硝酸性窒素」
- 超過率トップ
- 農地・畜産・生活排水が原因
- 長期トレンドで改善傾向だが依然として高い
◆ ポイント2:VOC(トリクロロエチレン等)は“減少傾向”=“ゼロ”ではない
- 地下水は回復に時間がかかり、汚染源が取り除かれても長期的に流出する
- 毎年少数ながら新規超過が確認される
◆ ポイント3:文章中の「最近では〜ない」という断定は要注意
環境白書や地下水質調査では、「減少している」ことは強調されるが、
「ゼロ」「全くない」とは一度も書かれないため、断定文は疑って読む。


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