
公害防止管理者の過去問|令和3年 大規模水質特論 問8 問題と解説
問題8
鉄鋼業で、鋼板の表面処理として行われるクロメート工程からの排水に関する記述として、誤っているものはどれか。
- クロメート工程からは濃厚廃液とリンス排水が排出される。
- クロメート工程で主に用いられる六価クロムは有害で、しかも酸性でもアルカリ性でも沈殿を形成しない。
- クロメート排水は還元槽において、亜硫酸水素ナトリウムあるいは硫酸鉄(Ⅱ)などを用いてクロムを還元する。
- クロメート排水の還元反応で生じた三価クロムは、pHを3~4に調整して、水酸化クロムとして沈殿除去する。
- クロメート排水の還元反応では、一般に酸化還元電位計(ORP計)を用いて還元剤の注入量を調整するが、還元剤として鉄塩を用いる場合は、液中の溶存酸素濃度を指標にすることもできる。
問題8の解答
正解は「4」です。
問題8の解説
三価クロム(Cr(III))を沈殿(=固めて除去)させるには、pHは“酸性”ではなく“アルカリ側”に上げる必要があります。だから「pHを3〜4にして水酸化クロムとして沈殿」は成立しません。
クロメート排水の基本は、この2段階です。
- 六価クロム Cr(VI) を還元して三価クロム Cr(III) にする(毒性を下げ、沈殿できる形にする)
- pHを上げて Cr(OH)₃(=水酸化クロム)として沈殿除去する
ここで決定的に大事なのは、水酸化物として沈殿させるには、pHを“高く”する(アルカリ側)必要があるという点です。
なぜ④が誤りか
④はこう言っています。
還元反応で生じた三価クロムは、pHを3〜4に調整して、水酸化クロムとして沈殿除去する。
しかし、pH 3〜4 は 酸性です。酸性では一般に 水酸化物(Cr(OH)₃)は溶けやすく、沈殿しにくいため、除去の操作として不適切です。
現場的にもモデル的にも、
- 還元は酸性寄りで行うことはある(反応を安定させるため)
- ただし沈殿はその後、pHをアルカリ側(一般に8〜9付近を目安)に上げて行う
という流れが基本です。よって④が誤りになります。
他の選択肢が「だいたい自然」な理由
- ① 濃厚廃液(浴)とリンス排水が出る:工程の実態として自然
- ② 六価クロムは有害で、(そのままでは)沈殿しにくい:方向性として自然(だから還元が必要)
- ③ 亜硫酸水素ナトリウム等で還元:典型的で自然
- ⑤ ORPで注入量管理:典型的で自然(DOを補助指標にする運用もあり得ます)
問題のポイント
この問題のひっかけは、④が「pHを調整する」「水酸化クロム」という、いかにも正しそうな単語で固めている点です。しかし、“水酸化物沈殿=アルカリ側で沈む”という基本に立ち返ると、一瞬で見抜けます。


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