問題12
環境基本法に規定する環境の保全に関する記述中、下線を付した箇所のうち、誤っているものはどれか。
環境の保全は、(1)社会経済活動その他の活動による環境への負荷をできる限り低減することその他の環境の保全に関する行動が(2)官民の公平な役割分担の下に(3)自主的かつ積極的に行われるようになることによって、健全で恵み豊かな環境を維持しつつ、環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら(4)持続的に発展することができる社会が構築されることを旨とし、及び科学的知見の充実の下に環境の保全上の支障が(5)未然に防がれることを旨として、行われなければならない。
(令和2年)
問題12の解答
正解は「2」です。
問題12の解説
この問題は、環境基本法(第4条) に定められている「環境の保全」の理念に関する条文理解を問うものです。この条文は、環境保全を「社会・経済活動と両立させつつ、持続的に発展する社会を築くための原則」として位置づけています。
第四条 環境の保全は、社会経済活動その他の活動による環境への負荷をできる限り低減することその他の環境の保全に関する行動がすべての者の公平な役割分担の下に自主的かつ積極的に行われるようになることによって、健全で恵み豊かな環境を維持しつつ、環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら持続的に発展することができる社会が構築されることを旨とし、及び科学的知見の充実の下に環境の保全上の支障が未然に防がれることを旨として、行われなければならない。
e-gov 法令検索より引用
この部分は条文どおりです。環境の保全の第一歩は、「環境への負荷(=人間の活動による環境への悪影響)」をできるだけ小さくすることです。
「環境への負荷」とは、人間の活動(産業・交通・生活など)が環境に与える悪影響を指します。大気汚染、温室効果ガス排出、水質汚濁、廃棄物発生などが代表例です。
環境保全は「活動をやめる」ことではなく、環境負荷を最小化しながら経済・社会を動かすという考え方。これは、環境と経済の両立を重視する環境基本法の中心的理念です。
ここがこの問題の誤り箇所です。条文では「官民」ではなく、「すべての者」 という包括的表現が使われています。
✅ 正:すべての者の公平な役割分担の下に
❌ 誤:官民の公平な役割分担の下に
環境保全は、行政(官)と民間(企業・市民)だけの責任ではなく、国・地方公共団体・事業者・国民など社会のすべての主体が協働して進めるべきものだからです。
- 国:施策・制度設計(法や計画の策定)
- 地方自治体:地域に即した環境施策
- 事業者:企業活動における排出削減や自主管理
- 国民:日常生活での環境配慮行動
単に“平等に責任を分け合う”という意味ではなく、それぞれの立場・能力・影響の範囲に応じて適正に責任を果たすことを指します。したがって、「官民の公平な〜」という表現は、対象を限定しており条文に反します。
この部分も条文どおりです。環境保全は、「命令や規制に従う」だけではなく、各主体が自ら考え、積極的に行動することが大切だという考え方です。例えば、次のような活動が想定されます。
- 企業:ISO14001・エコ経営・再エネ導入
- 国民:ゴミの分別・エコ製品の利用・節電
- 行政:協働や環境教育の推進
これは環境基本法の「参加型・協働型の環境保全」を象徴する文言であり、「義務ではなく主体的行動で守る」という価値観を示しています。
条文に明記されているとおり、ここでいう「持続的に発展する社会」とは、環境と経済を両立させながら発展を続けられる社会のことです。
🔹 意味の背景
- 経済活動が環境を壊してしまっては本末転倒。
- 一方で、環境保全ばかりで経済が止まっても社会が成り立たない。
そこで、「環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら」という表現が入っています。この部分は、国際的に言う「サステナブル・ディベロップメント(Sustainable Development)」、すなわち「持続可能な開発」という考え方と一致しています。
これも条文の後段そのままです。環境問題を「起きてから直す」のではなく、科学的な根拠にもとづいて、問題が起きる前に防ぐという理念(=予防原則)を示しています。例えば、次のような施策が想定されます。
- まだ被害が出ていない化学物質でも、危険性が示唆されれば使用を制限する
- 環境モニタリングで異常兆候を早期に検知して対策を打つ
この「未然防止」は、環境基本法の実践的な柱です。
本条を噛み砕くと、次のように整理できます。



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