公害防止管理者試験の過去問|公害総論:環境基本法に関する問題⑤

公害防止管理者試験の過去問|公害総論:環境基本法に関する問題⑤
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問題5

環境基本法の基本理念に関する記述中、下線を付した箇所のうち、誤っているものはどれか。

環境の保全は、(1)社会経済活動その他の活動による環境への負荷をできる限り低減することその他の環境の保全に関する行動が(2)すべての者の公平な役割分担の下に(3)有機的かつ総合的に行われるようになることによって、健全で恵み豊かな環境を維持しつつ、環境への負荷の少ない(4)健全な経済の発展を図りながら持続的に発展することができる社会が構築されることを旨とし、及び科学的知見の充実の下に環境の保全上の支障が(5)未然に防がれることを旨として、行われなければならない。

(令和4年)

問題5の解答

正解は「3」です。

問題5の解説

条文の正誤問題は毎年のように出題されています。一文一句暗記するのが手っ取り早いのですが、条文の趣旨を理解することで、誤りを見抜くことができるようになります。まず、問題5で引用されている環境基本法第四条の条文は以下のとおりです。

第四条 環境の保全は、社会経済活動その他の活動による環境への負荷をできる限り低減することその他の環境の保全に関する行動がすべての者の公平な役割分担の下に自主的かつ積極的に行われるようになることによって、健全で恵み豊かな環境を維持しつつ、環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら持続的に発展することができる社会が構築されることを旨とし、及び科学的知見の充実の下に環境の保全上の支障が未然に防がれることを旨として、行われなければならない。

e-gov 法令検索より引用

その上で、それぞれの正誤に関する背景について把握してきましょう。

社会経済活動その他の活動:正しい

条文を覚えるしかありませんが、環境基本法は、人間のあらゆる活動から生じる環境への負荷を可能な限り減らすことを目標としています。その範囲は経済活動のみならず、社会全般で営まれる諸活動にまで広がっています。したがって、社会経済活動その他の活動という最も広い概念を用いているわけです。

すべての者の公平な役割分担:正しい

環境基本法では、国、地方公共団体、企業、個人など様々な主体が協力して環境の保全に努めることを基本ルールとしています。要するに、「みんなの責任」として位置付けているのです。企業が努力しても、個人は何もしないのでは、環境の保全を実現することはできませんよね。そのため、「すべての者の公平な役割分担」を適切に定める必要があるわけです。

有機的かつ総合的:間違い

正しくは「自主的かつ積極的」という表現が用いられています。国民・企業が「強制されるから仕方なく」ではなく、自分から進んで環境に優しい行動を選択する基本的な姿勢を明示しています。それぞれの役割を果たす視点として「有機的かつ総合的」になるのは明記するまでもない自然なことですので、ここでは各立場の「主体性」が重視されていることを覚えておきましょう。

健全な経済の発展:正しい

環境基本法では、「環境を守りつつ経済の発展も両立させる」ことを明確にしています。例えると、森を全部切ってお金にするんじゃなく、森を育てながら少しずつ果実を収穫して続けるという「持続可能な経済」の基本的な考え方を示しています。

公害問題が起きたのは環境を犠牲にした経済活動が横行していたからです。その反省として、環境基本法では「環境を守りながら経済の発展を目指す」という基本姿勢が明文化されているのです。

未然に防がれる:正しい

環境への悪影響の中には、野生動物の絶滅など不可逆的な問題も存在しています。そのため、被害が出てからでは遅いので、事前予防原則を大事にしているのです。

本条を噛み砕くと、次のように整理できます。

人間の活動による環境への負担をできるだけ減らすことが大前提になっていること

国・自治体・企業・国民のすべてが公平に責任を持ち、自主的かつ積極的に取り組むこと

環境を守りながらも健全な経済発展を図り、「持続可能な社会」を構築すること。

科学的知見を活用し、環境への被害は「起きてから直す」ではなく「未然に防ぐ」こと

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本記事の監修者

ISEED編集部は、環境技術、環境倫理、環境に関する資格について読者に有益な情報を調査・配信しています。記事制作においてリサーチ、構成、ライティング、編集、グロースハックの仕組みを適切に設計することで読者にわかりやすい文章を作ることを心がけています。

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