公害防止管理者の過去問|令和5年 水質概論 問9 問題と解説

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問題9

化学物質のリスク評価に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 化学物質によるリスクは、有害性(ハザード)と暴露量によって決まる。
  2. 無毒性量(NOAEL)の情報は、閾値が存在する化学物質のリスク評価に利用される。
  3. TDIは、人が一生涯摂取し続けても悪影響を生じないと考えられる体重1kg当たりの1日当たりの摂取量で表わされる。
  4. 不確実係数積は、動物と人との種差による係数と、個体差による係数との積であり、105~106の範囲の値となる。
  5. 遺伝子障害性をもつ発がん性物質に関しては、閾値は存在しないと考えられている。

問題9の解答

正解は「4」です。

問題9の解説

化学物質のリスクは、一般に「有害性(ハザード:どんな悪影響を起こし得るか)」と「ばく露(どれくらい体に入るか)」の組合せで考えます。環境省のリスクコミュニケーション資料でも、リスクは「有害性×ばく露量(摂取量)」という形で説明されています。

出典(環境省):https://www.env.go.jp/chemi/communication/taiwa/text/3s.pdf

1. 化学物質によるリスクは、有害性(ハザード)と暴露量によって決まる。

正しい。上記のとおり、環境省資料で「リスク=有害性×ばく露量(摂取量)」として整理されています。
出典(環境省):https://www.env.go.jp/chemi/communication/taiwa/text/3s.pdf

2. 無毒性量(NOAEL)の情報は、閾値が存在する化学物質のリスク評価に利用される。

正しい。NOAEL(無毒性量)は、動物試験などから得られる「影響が見られない量」で、閾値がある(=ある程度までは影響が出ない)タイプの毒性評価で、基準値設定の出発点として使われます。環境省のリスク評価ガイドブックでも、NOAEL等を指標としてヒトの評価値(ヒト無毒性量など)を算出する流れが説明されています。
出典(環境省):https://www.env.go.jp/water/dojo/noyaku/hisan_risk/hyoka_tih/com06/ref05.pdf
補足(環境省):https://www.env.go.jp/chemi/communication/taiwa/text/3s.pdf

3. TDIは、人が一生涯摂取し続けても悪影響を生じないと考えられる体重1kg当たりの1日当たりの摂取量で表わされる。

正しい。厚生労働省の用語集で、TDI(耐容一日摂取量)は「人が一生涯にわたり摂取しても有害な影響が現れないと推定される体重1kg当たりの1日当たり摂取量」と定義されています。
出典(厚生労働省):https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/glossary.html

4. 不確実係数積は、動物と人との種差による係数と、個体差による係数との積であり、10-5~10-6の範囲の値となる。

誤り(これが正解)。

前半(「種差係数×個体差係数」)は概ね正しいです。不確実係数(UF)は、たとえば「動物→ヒトへの外挿(種差)」や「ヒト集団内の感受性の違い(個体差)」などの不確実性を見込むために用います。経済産業省の技術ガイダンスでも、不確実性の例として種間差・個体差などが挙げられています。

出典(経済産業省):https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kasinhou/files/information/ra/02_tech_guidance_ii_hitoyuugaisei_v_1_2.pdf

しかし、後半の「10-5~10-6になる」は完全に誤りです。不確実係数は「安全側に見積もるために掛ける係数」なので、通常は 1より大きい値になります。NITE(製品評価技術基盤機構)の解説では、一般的に 種差(×10)×個人差(×10)=100 を基本とすると明記しています。

よって「10-5~10-6」という“極端に小さい数”になる、という記述は誤りです。

出典(NITE):https://www.nite.go.jp/chem/shiryo/ra/about_ra7.html

5. 遺伝子障害性をもつ発がん性物質に関しては、閾値は存在しないと考えられている。

正しい。環境省資料で、WHO等の考え方として「遺伝子障害性(遺伝毒性)を持つ物質は“閾値のない発がん性物質”」として扱い、異なる評価手法を用いると説明されています。

出典(環境省):https://www.env.go.jp/chemi/communication/taiwa/text/hito.pdf
参考(厚生労働省資料:遺伝毒性発がん性物質は発がん性の閾値がないとの整理):https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002vzdz-att/2r9852000002vzio.pdf

問題を解くポイント

  • 遺伝毒性発がん性は「閾値なし」として扱う、という行政・国際機関の整理を押さえる。
  • 「不確実係数(UF)」は安全側にするための“掛け算の係数”なので、基本的に 1より大きく、代表例は 10×10=100(種差×個体差)。
  • TDI/ADI は「一生涯・毎日摂取しても影響が出ない量(体重1kgあたり/日)」という定義を、そのまま覚える。
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本記事の監修者

ISEED編集部は、環境技術、環境倫理、環境に関する資格について読者に有益な情報を調査・配信しています。記事制作においてリサーチ、構成、ライティング、編集、グロースハックの仕組みを適切に設計することで読者にわかりやすい文章を作ることを心がけています。

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