公害防止管理者の過去問|令和4年 水質概論 問9 問題と解説

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問題9

有害物質の人体影響に関する記述として、誤っているものはどれか。

  • 生体内に水銀が侵入した場合、体内全蓄積量あるいは臓器内蓄積量が閾値を超えなければ、長期間体内に存在しても障害を与えることはない。
  • 重金属の生体内への侵入経路には、吸入摂取、経口摂取、経皮吸収があるが、侵入経路の違いによって毒性の発現が異なることはない。
  • 有害性金属が複合して生体内に作用する場合、金属間の相互作用により毒性が弱められることがあり、この現象は拮抗作用といわれる。
  • カドミウム、水銀、亜鉛、鉛などの重金属の暴露により肝臓などで誘導生合成されるメタロチオネインは、重金属の解毒作用の役割を果たしている。
  • 生物学的半減期の長いものは、排泄されにくいので、毒性が現れやすい。

問題9の解答

正解は「2」です。

問題9の解説

選択肢2では、「侵入経路の違いによって毒性の発現が異なることはない」としていますが、これは毒性学において明らかに誤りです。同じ物質であっても、「吸い込むか(吸入)」「食べるか(経口)」といった侵入経路の違いによって、吸収される場所、体内で運ばれる臓器、そして引き起こされる中毒症状(標的臓器)が全く異なるケースがあります。

最も有名な例は「水銀」です。

  • 水銀蒸気(吸入摂取):
    • 肺から吸収され、脳(中枢神経)へ移行しやすい。
    • 症状:手の震え、精神障害など。
  • 塩化第二水銀などの無機水銀(経口摂取):
    • 消化管から吸収され、腎臓へ集まりやすい。
    • 症状:腎機能障害、消化管の腐食など。

このように、侵入経路が異なれば、体内動態(どう動くか)が変わり、結果として毒性の現れ方も変わります。

  • 1. 正しい記述です(閾値の概念)
    • 発がん性物質などを除き、一般的な毒物には「これ以下の量なら影響が出ない」という境界線があります。これを「閾値(いきち)」と呼びます。閾値を超えない限り、生体の防御機能や解毒機能が働くため、障害は発生しないと考えられています。
  • 3. 正しい記述です(拮抗作用)
    • 2種類以上の物質が同時に体内にあるとき、互いの毒性を打ち消し合うことを「拮抗(きっこう)作用」と呼びます。
    • 有名な例:「水銀とセレン」。セレンは水銀の毒性を軽減させる働きがあります。逆に、毒性を強め合う場合は「相乗作用」と呼びます。
  • 4. 正しい記述です(メタロチオネイン)
    • メタロチオネインは、金属(Metal)と結合する硫黄(Thio)を含んだタンパク質(Protein)です。
    • カドミウムなどの有害金属が体に入ってくると、肝臓や腎臓でこのタンパク質が作られ、有害金属をガッチリと取り込んで無毒化しようとします。これは生体の重要な防御反応です。
  • 5. 正しい記述です(生物学的半減期)
    • 体内に入った物質が代謝・排泄されて半分に減るまでの期間を**「生物学的半減期」**といいます。
    • これが長い(=なかなか体から出ていかない)物質ほど、体内に蓄積されやすく、慢性的な毒性を発揮するリスクが高まります(例:カドミウムの半減期は10年~30年と非常に長い)。

問題を解くポイント

この問題は、以下の「毒性学の4つのキーワード」を押さえておけば確実に解けます。

  1. 侵入経路と毒性: 「どこから入るか」で毒性は変わる(例:水銀)。
  2. 拮抗作用: 毒を弱め合う関係(例:水銀 ⇔ セレン)。
  3. メタロチオネイン: 金属から身を守るための「解毒タンパク質」。特にカドミウムとの関係で試験によく出ます。
  4. 生物学的半減期: 長い=危険(蓄積する)。カドミウムは極めて長く(数十年)、メチル水銀は約70日です。

試験では「メタロチオネイン」の意味を問う問題や、「拮抗作用」と「相乗作用」を入れ替えたひっかけ問題もよく出ますので、用語の定義をしっかり覚えておきましょう。

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本記事の監修者

ISEED編集部は、環境技術、環境倫理、環境に関する資格について読者に有益な情報を調査・配信しています。記事制作においてリサーチ、構成、ライティング、編集、グロースハックの仕組みを適切に設計することで読者にわかりやすい文章を作ることを心がけています。

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