
公害防止管理者の過去問|令和4年 大規模水質特論 問8 問題と解説
問題8
製油所における排水とその処理に関する記述として、不適切なものはどれか。
- SSの除去は、排水に硫酸アルミニウム、塩化鉄(Ⅲ)などを添加し、SSの沈殿速度を速めて除去する凝集沈殿プロセスなどで行う。
- 排水中の油分の分離装置としては、遊離油を自然浮上させてかき取るAPIオイルセパレーターなどがある。
- APIオイルセパレーターにより、排水中の油分(ノルマルヘキサン抽出物質)濃度は、1mg/L以下に下げることができる。
- 排水中のBOD、COD及びフェノールの除去には活性汚泥プロセスが用いられる。
- 原油中の硫化水素、水素化処理で生じた硫化水素やアンモニアは、排水ストリッパーで加熱分離される。
問題8の解答
正解は「3」です。
問題8の解説
この問題は、製油所排水の代表的な処理(油水分離・凝集沈殿・生物処理・ストリッピング)について、「各装置でどこまで除去できるか」という“到達できる水質の感覚”を問う概念問題です。
③が不適切なのは、APIオイルセパレーターは主として「遊離油(浮きやすい油)」を重力分離する装置であり、通常それだけでノルマルヘキサン抽出物質を1 mg/L以下まで下げるのは一般的ではないからです。
分散油や乳化油、微細油滴は重力分離だけでは残りやすく、より低濃度を狙う場合は、凝集・加圧浮上(DAF)・フィルタ・活性炭等の後段処理と組み合わせるのが通常です。
解答に至るまでのステップ
ステップ1 APIオイルセパレーターが得意な油の種類を確認する
このステップでは、APIオイルセパレーターの役割を整理します。理由は、③の正誤は「APIでどこまで油が取れるか」によって決まるからです。
APIオイルセパレーターは、排水中の油のうち 遊離油(油滴が大きく、比重差で浮上しやすい油)を、重力で浮上させて分離する装置です。一方で、分散油(細かい油滴)や乳化油(界面活性剤などで安定化した油)は浮上しにくく、APIだけでは残りやすい、という性質があります。
ステップ2 「1 mg/L以下」という到達水質がAPI単独として妥当かを点検する
次に、③の主張を丁寧に見ます。
APIオイルセパレーターにより、排水中の油分(ノルマルヘキサン抽出物質)濃度は、1 mg/L以下に下げることができる。
ここで重要なのは、「APIが油を下げられること」自体ではなく、“どの程度まで”を一般的に言い切れるかです。
APIは遊離油の分離には有効ですが、実排水には分散油・乳化油も含まれやすく、これらはAPI単独では除去が難しいため、1 mg/L以下という非常に低いレベルをAPIのみで達成できる、と断定するのは不適切です。低濃度まで落とすには、通常、後段の凝集・浮上・ろ過などの“磨き上げ工程”が必要になります。
ステップ3 他の選択肢が製油所排水処理の説明として自然かを確認する
③以外が整合することを確認し、誤りが③であることを固めます。
- ① 凝集剤(硫酸アルミニウム、塩化鉄など)でフロックを作り、SSを沈めて除去する凝集沈殿は一般的です。
- ② APIオイルセパレーターは遊離油を自然浮上させて除去する代表的装置で、説明として自然です。
- ④ BOD/CODやフェノールの除去に活性汚泥が用いられるのも、製油所排水の標準的な考え方です。
- ⑤ 硫化水素やアンモニアなど揮発性成分を排水ストリッパーで分離する、という説明も自然です。
問題のポイント
この問題のポイントは、装置名を覚えることよりも、「その装置が得意な汚れ」と「到達できる水質の限界感」を持つことです。
APIオイルセパレーターは、遊離油の一次分離として非常に重要ですが、微細な油滴や乳化油まで含めて“極めて低濃度”を狙う場合は、通常、後段処理が必要になります。③はその点を無視して、API単独で1 mg/L以下と断定しているため不適切です。


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