
公害防止管理者の過去問|令和6年 ばいじん・粉じん特論 問5 問題と解説
問題5
電気集じん装置に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 通常、正コロナの火花電圧は負コロナの火花電圧の約1/2である。
- 電界荷電による粒子帯電量は、粒子径の2乗に比例する。
- 電界荷電による粒子帯電量は、誘電定数に比例する。
- 電界荷電においては、コロナ電流密度が大きいほど短時間で粒子を帯電できる。
- 拡散荷電による粒子帯電量は、ガスの絶対温度(K)に反比例する。
問題5の解答
正解は「5」です。
問題5の解説
解答に至るまでのステップ
ステップ1 原理・原則:電気集じん装置(ESP)の「粒子帯電」は2方式で整理します
ESPで粒子が帯電する主な仕組みは、次の2つです。
- 電界荷電(field charging):電界に沿って移動するイオンが粒子に衝突・付着して帯電します。大きめ粒子で支配的です。
- 拡散荷電(diffusion charging):イオンの熱運動(熱的な拡散)で粒子へ到達し、帯電します。微小粒子で効きやすいです。
この整理を土台に、各選択肢がどちらの帯電式を述べているかを見分け、式の依存関係(比例・反比例)で正誤判定します。
ステップ2 選択肢5を判定(誤り候補の核心:温度依存)
5. 拡散荷電による粒子帯電量は、ガスの絶対温度(K)に反比例する。
→ 誤りです。
EPAの式では、拡散荷電による粒子電荷 が
の形で与えられ、少なくとも係数部分に T(絶対温度)が“分子側”に入っていることが明示されています。したがって、「反比例(温度が上がると帯電量が下がる)」という断定は成り立ちません。
むしろ、式の構造からは温度が帯電に寄与する(増加方向に効く)ことが読み取れます。よって (5) が誤りになります。
ステップ3 残り(1)~(4)を、原理と根拠で1つずつ正誤判定します
1. 通常、正コロナの火花電圧は負コロナの火花電圧の約1/2である。
→ 正しいです。
ESPでは、一般に負極性(負コロナ)の方が、正極性(正コロナ)より高い電圧まで火花放電に移行しにくいため、負極性が採用されやすいです。この関係は「正が負の約1/2」という表現と整合します。
2. 電界荷電による粒子帯電量は、粒子径の2乗に比例する。
→ 正しいです。
EPAでは、電界荷電の飽和帯電量(saturation charge)として
が示され、半径 r の2乗に比例すること、つまり粒子径 dp()の2乗に比例します。したがって (2) は正しいです。
3. 電界荷電による粒子帯電量は、誘電定数に比例する。
→ 正しいです(少なくとも「誘電率に依存して増減する」趣旨として妥当です)。
電界荷電の式は、理想化(導体球など)では (真空の誘電率)を用いた形で示されますが、粒子が絶縁性(誘電体)であれば、比誘電率(誘電率)によって飽和帯電量が変化することが学術的に示されています。したがって、「誘電定数に比例(=誘電率が大きいほど帯電しやすい方向)」という方向性の主張は妥当で、(3) は誤りとはいえません。
4. 電界荷電においては、コロナ電流密度が大きいほど短時間で粒子を帯電できる。
→ 正しいです。
電界荷電の時間定数を示す式は以下のとおりです。
(:粒子近傍のイオン数濃度、:イオン移動度)。
この式から、イオン数濃度 N が大きいほど τ′ は小さくなり、短時間で飽和に近づくことが分かります。コロナ電流密度が大きい状況は、一般にイオン生成・供給が多くなる( が増える)方向なので、(4) の主張と整合します。
よって正しいです。
問題のポイント
- 拡散荷電=イオンの熱運動(熱的拡散)が鍵で、式にも が現れます。したがって「温度に反比例」と断定する肢は疑ってかかります。
- 電界荷電は粒子径(半径)の2乗依存が頻出です(飽和帯電量が に比例)。
- 帯電の速さは「イオンがどれだけ供給されるか(イオン濃度)」で決まり、時間定数が で小さくなるほど短時間で帯電します。
- コロナ極性は、負コロナの方が正コロナより高い電圧まで火花に移行しにくいことが基本で、比として「負が正の約2倍程度」という報告もあります。


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