問題3
環境基本法第2条の定義に関する記述中、下線を付した箇所のうち、誤っているものはどれか。
この法律において(1)「地球環境保全」とは、人の活動による地球全体の(2)気候変動又はオゾン層の破壊の進行、(3)海洋の汚染、(4)野生生物の種の減少その他の地球の全体又はその広範な部分の環境に影響を及ぼす(5)事態に係る環境の保全であって、人類の福祉に貢献するとともに国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するものをいう。
(令和5年)
問題3の解答
正解は「2」です。
問題3の解説
公害防止管理者試験の公害総論では、条文それ自体を覚えなければいけません。条文を暗記することに価値があるとは言い難いのですが、試験性質上「そのまま覚える」ことから逃げられないのが実情です。特に、環境基本法第二条は言葉の定義に関する項目なので、環境への負荷、地球環境保全、そして公害の内容を暗記しておくことが重要です。
まず、問題3で引用されている環境基本法第二条の条文は以下のとおりです。
第二条 この法律において「環境への負荷」とは、人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。
e-gov 法令検索より引用
2 この法律において「地球環境保全」とは、人の活動による地球全体の温暖化又はオゾン層の破壊の進行、海洋の汚染、野生生物の種の減少その他の地球の全体又はその広範な部分の環境に影響を及ぼす事態に係る環境の保全であって、人類の福祉に貢献するとともに国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するものをいう。
3 この法律において「公害」とは、環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁(水質以外の水の状態又は水底の底質が悪化することを含む。第二十一条第一項第一号において同じ。)、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下(鉱物の掘採のための土地の掘削によるものを除く。以下同じ。)及び悪臭によって、人の健康又は生活環境(人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含む。以下同じ。)に係る被害が生ずることをいう。
言葉を暗記するのではなく、その背景を理解することが重要です。
環境基本法が環境保全に関するベースの法律であることを考えると、「気候変動」という大きな枠組みで捉えることに違和感はありません。その意味では、正解のように見える難しさがあると言えます。
この問題を理解するには、環境基本法が成立した1993年という時代に問題視されていたことを踏まえておく必要があります。実のところ、1992年に「気候変動枠組み条約(UNFCCC)」が採択された後で、日本の国内法でも具体的な環境問題として提起されていた「温暖化」に対して明確に取り組む必要がありました。したがって、冷涼化や干ばつなど様々な問題を含む「気候変動」という広い概念ではなく、「温暖化」という具体的な問題を定めることで、国として注力する対象を明らかにしたと推察されます。
加えて、テクニカルな視点ですが、「又は」として結ばれている言葉の抽象度が揃っていない点を考えると、気候変動が間違いである可能性に気づくことができます。すなわち、気候変動に対して「オゾンの破壊の進行、海洋の汚染、野生生物の種の減少」は具体的な事象を説明しています。これらが同じ論理で並列に位置付けられるのは粒度の違いという点で違和感があります。
本条を噛み砕くと、次のように整理できます。



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