
公害防止管理者の過去問|令和4年 大規模水質特論 問10 問題と解説
問題10
製紙工場から発生する排水の一般的な処理に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 処理の対象となる主な水質汚濁物質は、BODあるいはCOD成分とSSであるが、それらに加えて六価クロム、鉛の処理工程も加えた。
- BOD及びSSの処理工程として二段処理とし、1段目の活性汚泥処理でBOD成分を、2段目の凝集沈殿処理でSSを除去するものとした。
- 生物処理工程において、初沈槽を出た排水は、夏期の水温が高い時期は冷却塔を通して水温を下げてから調整槽に送り、そこで排水と返送汚泥を混合させると同時に、栄養源である窒素とりんも添加した。
- 凝集沈殿処理装置では、凝集剤として硫酸ばん土と陰イオン系高分子凝集剤を用いた。
- 発生するスラッジは高分子凝集剤を添加した後、ベルトプレス脱水機で脱水し、ろ水は全量を排水処理工程の入口に戻して再処理を行った。
問題10の解答
正解は「1」です。
問題10の解説
この問題は、「製紙工場排水の“一般的”な処理内容として何が妥当か」を問う問題です。
ポイントは、
- 製紙工場排水で通常問題になる汚濁物質は何か
- それに対して、どのような処理が一般的に組み込まれるか
を冷静に切り分けて考えることです。
①が誤りとなる理由は、製紙工場排水の一般的な処理対象として、六価クロムや鉛を前提に処理工程を組み込むのは不適切だからです。
解答に至るまでのステップ
ステップ1 「一般的な製紙工場排水」の性質を確認する
まず、この問題は「特殊な例」ではなく、一般的な製紙工場排水について問うています。
製紙工場排水の主な特徴は次のとおりです。
- 原料由来の有機物(セルロース、ヘミセルロース、リグニン由来成分)
- 繊維片や填料などの SS
- 結果として問題となる指標は
BOD、COD、SS が中心
ここまでが、製紙排水の“標準的な前提”です。
ステップ2 ①に含まれる「六価クロム・鉛」という記述を検討する
①は次のように述べています。
主な水質汚濁物質はBODあるいはCOD成分とSSであるが、それらに加えて六価クロム、鉛の処理工程も加えた。
ここで重要なのは、六価クロムや鉛は、製紙工場排水の一般的な汚濁物質ではないという点です。
- 六価クロム:めっき、表面処理、顔料など特定産業で問題となる物質
- 鉛:電池、金属加工、顔料などが主な発生源
製紙工程そのものから、これらが恒常的に排出されるわけではありません。
仮に設備由来・薬品由来で混入する可能性がゼロではなくても、それは 「特殊ケース」や「個別対応」 の範囲であり、「一般的な処理」として最初から組み込むのは不適切です。
ステップ3 他の選択肢が「一般的処理」として成立しているかを確認する
- ①以外の選択肢を確認すると、いずれも 製紙工場排水の標準的な運転・設計思想に沿っています。
- ②表現はやや単純化されていますが、BOD対策として生物処理、SS低減として凝集沈殿を組み合わせる流れ自体は一般的な説明として許容範囲です。
- ③生物処理の安定化のための水温調整、N・P添加は製紙排水ではよく行われます。
- ④硫酸ばん土+高分子凝集剤は標準的な凝集沈殿条件です。
- ⑤スラッジ脱水後のろ水を処理系へ返送する運用も一般的です。
これらと比較すると、①だけが「製紙排水の一般像」から明確に外れた物質を前提にしていることが分かります。
問題のポイント
この問題の本質は、「一般的」という言葉をどう解釈するかです。
- 製紙工場排水の一般的処理
→ BOD/COD/SSが中心
→ 重金属(六価クロム、鉛)は通常含まれない
①は、「処理工程も加えた」という表現で一見もっともらしく見えますが、一般論としては過剰・不適切な前提を置いている点が誤りです。


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