
公害防止管理者の過去問|令和7年 公害総論 問8 問題と解説

問題8
光化学オキシダントに関する記述として、誤っているものはどれか。
- 窒素酸化物(NOx)と非メタン炭化水素を含む揮発性有機化合物(VOC)などがかかわる大気中の光化学反応によって、光化学オキシダントが生成する。
- パーオキシアセチルナイトレートは、光化学オキシダントの一つである。
- オゾンは光化学オキシダントの90%以上を占めている。
- 光化学オキシダントの測定方法として、紫外線吸収法やエチレンを用いる化学発光法がある。
- 2022(令和4)年度における光化学オキシダントの環境基準達成率は、一般環境大気測定局で1%、自動車排出ガス測定局で0.5%であった。
問題8の答え
正解は「5」です。
問題8の解説
2022(令和4)年度の光化学オキシダント(Ox)の環境基準達成率の数字がポイントです。まずは各選択肢が「定義・仕組み・測定法・統計値」と合っているかをひとつずつ確認していきます。
選択肢1
窒素酸化物(NOx)と非メタン炭化水素を含む揮発性有機化合物(VOC)などがかかわる大気中の光化学反応によって、光化学オキシダントが生成する。
- 光化学オキシダント(Ox)は、NOx と VOC(特に非メタン炭化水素)が太陽光(紫外線)を受けて、光化学反応を起こし、二次的に生成される酸化性物質の総称です。
- 生成メカニズムの説明資料でも、「大気中の揮発性有機化合物(VOC)と窒素酸化物(NOx)の混合系に太陽光が照射されることで生成」と説明されています。
👉 NOx+VOC+太陽光による光化学反応でOxが生成する、という記述は正しいです。
選択肢2
パーオキシアセチルナイトレートは、光化学オキシダントの一つである。
- 環境省資料では、光化学オキシダントとは 「オゾン、パーオキシアセチルナイトレート(PAN)その他の光化学反応により生成される酸化性物質(中性ヨウ化カリウム溶液からヨウ素を遊離するものに限り、二酸化窒素を除く。)」と定義されています。
- 千葉県の解説等でも、Oxの構成成分としてオゾン、PAN、アルデヒド類などが挙げられています。
👉 PAN(パーオキシアセチルナイトレート)は光化学オキシダントの構成要素の一つであり、この記述は正しいです。
選択肢3
オゾンは光化学オキシダントの90%以上を占めている。
- ERCA(環境再生保全機構)の解説では、 「光化学オキシダントとは…90%以上がオゾンである。」
- AISTのリスク評価書等でも、「酸化性物質の主成分(90%以上)をオゾンが占める」とされています。
👉 「90%以上がオゾン」という表現は、代表的な説明どおりで正しいです。
選択肢4
光化学オキシダントの測定方法として、紫外線吸収法やエチレンを用いる化学発光法がある。
- 環境基準告示に基づく測定方法としては、
- 中性ヨウ化カリウム吸光光度法
- 電量法
- 紫外線吸収法
- エチレンによる化学発光法
などが示されています。
- これらはいずれも光化学オキシダント(実際には主成分であるオゾン)を対象とした公定法です。
👉 紫外線吸収法・エチレン化学発光法ともに正式な測定方法なので、この記述は正しいです。
選択肢5(これが誤り)
2022(令和4)年度における光化学オキシダントの環境基準達成率は、一般環境大気測定局で1%、自動車排出ガス測定局で0.5%であった。
ここがこの問題の決め手です。環境省の令和6年版環境白書(第7節 大気環境の保全)では、2022(令和4)年度の光化学オキシダントについて、次のように記載されています。
2022年度の光化学オキシダントの環境基準達成率は、一般局 0.1%(測定局数1,143局)、自排局 0%(測定局数31局) であり、依然として極めて低い水準です。
つまり、
- 一般環境大気測定局:0.1 %
- 自動車排出ガス測定局:0 %
であって、1%や0.5%ではありません。よって、選択肢5の数値(1%、0.5%)は明確に誤りです。
問題を解くポイント
- 光化学オキシダントの「中身」と「生成メカニズム」は必須知識
- 中身:オゾン(90%以上)、PAN、アルデヒド類など
- 生成:NOx+VOC+紫外線による二次生成物
→ 公害総論の頻出テーマなので、定義ごと覚える。
- 測定方法は「キーワードで丸暗記」
- 「中性ヨウ化カリウム吸光光度法・電量法・紫外線吸収法・エチレン化学発光法」
とフレーズで覚えておくと、選択肢4の真偽判断が一気に楽になります。
- 「中性ヨウ化カリウム吸光光度法・電量法・紫外線吸収法・エチレン化学発光法」
- 環境基準達成率は「極めて低い水準」というイメージ+代表値
- 令和4年度:一般 0.1%、自排 0%
- 「1%台なんて立派な数字ではない」と覚えておくと、今回のような微妙な数値のひっかけにも対応できます。
この問題では、「光化学オキシダントは何か?」という基礎知識と、「最近の環境基準達成状況」という最新データの両方を問われています。条文・定義系の知識に加え、環境白書などのトレンドも、最低限の数字だけは押さえておくと合格に近づきます。


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