
公害防止管理者の過去問|令和7年 公害総論 問2 問題と解説

問題2
環境基本法第二章第14条に規定する環境の保全に関する基本的施策に関する記述中、ア~エの( )の中に挿入すべき語句(a~f)の組合せとして、正しいものはどれか。
この章に定める環境の保全に関する( ア )及び実施は、基本理念にのっとり、次に掲げる事項の確保を旨として、各種の施策相互の有機的な連携を図りつつ総合的かつ計画的に行わなければならない。
一 人の健康が保護され、及び生活環境が保全され、並びに自然環境が適正に保全されるよう、大気、水、土壌その他の環境の( イ )が良好な状態に保持されること。
二 生態系の( ウ )、野生生物の種の保存その他の生物の( ウ )が図られるとともに、森林、農地、水辺地等における多様な自然環境が地域の自然的社会的条件に応じて体系的に保全されること。
三 人と自然との( エ )が保たれること。
- a.施策の策定
- b.措置
- c.自然的構成要素
- d.多様性の確保
- e.調和
- f.豊かな触れ合い
| 選択肢 | ア | イ | ウ | エ |
|---|---|---|---|---|
| 1 | a | d | f | e |
| 2 | a | c | d | f |
| 3 | a | b | d | e |
| 4 | b | c | f | d |
| 5 | d | c | e | f |
問題2の答え
正解は「2」です。
問題2の解説
① 条文の原文をまず確認する
環境基本法第14条(施策の策定等に係る指針)は、原文では次のように規定されています。
この章に定める環境の保全に関する施策の策定及び実施は、基本理念にのっとり、次に掲げる事項の確保を旨として、各種の施策相互の有機的な連携を図りつつ総合的かつ計画的に行わなければならない。
一 人の健康が保護され、及び生活環境が保全され、並びに自然環境が適正に保全されるよう、大気、水、土壌その他の環境の自然的構成要素が良好な状態に保持されること。
二 生態系の多様性の確保、野生生物の種の保存その他の生物の多様性の確保が図られるとともに、森林、農地、水辺地等における多様な自然環境が地域の自然的社会的条件に応じて体系的に保全されること。
三 人と自然との豊かな触れ合いが保たれること。
これをそのまま、問題の(ア)~(エ)に当てはめればOKです。
② 各空欄に入る語句と「なぜそうなるのか」
この章に定める環境の保全に関する( ア )及び実施は…
ここは「何の策定及び実施」か、という話です。
- 選択肢 a:施策の策定
- 選択肢 b:措置
原文は「環境の保全に関する施策の策定及び実施」となっています。
- 法律では「施策の策定及び実施」という決まり文句がよく出てきます。
- 「措置及び実施」とすると日本語として不自然(実施も広い意味では「措置」の一種なので重複感が強い)。
したがって、アには施策の策定(a)が入ります。
…大気、水、土壌その他の環境の( イ )が良好な状態に保持されること。
ここは、「環境の〇〇」という形です。選択肢を見ると、候補になりそうなのは「c:自然的構成要素」くらいです。原文もまさに「…環境の自然的構成要素が良好な状態に保持されること。」となっています。
「自然的構成要素」とは?
- 大気、水、土壌など、自然環境を形作っている「素材・要素」のことです。
- それぞれの質を良好に保つことで、人の健康や生活環境、自然環境を守る、という考え方です。
したがって、イには 自然的構成要素(c)が入ります。
二 生態系の( ウ )、野生生物の種の保存その他の生物の( ウ )が図られるとともに…
同じ(ウ)が2回出てきます。原文では、「生態系の多様性の確保、野生生物の種の保存その他の生物の多様性の確保…」と「多様性の確保」が繰り返されています。
したがって、ウには「多様性の確保(d)」が入ります。
なぜ「多様性の確保」なのか?
- 生態系の価値は、単に「たくさん生物がいる」ことではなく、多様な種や遺伝子、環境が保たれていることにあります。
- 生物多様性基本法などでも繰り返し出てくるキーワードで、「環境基本法14条=多様性の確保」とセットで覚えると良いです。
三 人と自然との( エ )が保たれること。
選択肢の候補になりそうなのは
- e:調和
- f:豊かな触れ合い
の2つです。一見すると、「調和」もそれっぽいので迷いやすいところです。
しかし、原文は以下のようになっています。
「人と自然との豊かな触れ合いが保たれること。」
ここが試験的によくひっかけにされるポイントです。
- 「調和」は、環境基本法第3条(持続的発展が可能な社会の構築)など、他の条文で「人間活動と自然との調和」という形で出てきます。
- 第14条第3号では、「触れ合い」というより生活に近い表現が用いられています。 単に自然を壊さないだけでなく、「自然と親しむ豊かな関係性」を重視しているイメージ。
したがって、エには「豊かな触れ合い(f)」が入ります。
③ 問題を解くポイント・学習のコツ
ポイント① 第14条は「基本理念の具体化条文」
第14条は、「この章(第2章)の施策は、どんな方向性で行うべきか」を示す条文です。
内容は大きく3本柱:
- 環境の質の保持
- 大気・水・土壌などの自然的構成要素を良好に
- 生物多様性の保全
- 生態系・野生生物などの多様性の確保
- 人と自然との関係性
- 豊かな触れ合いを保つ
「環境の質」「生き物の多様性」「人と自然のつながり」この3つをワンセットで覚えましょう。
ポイント② 文法と日本語の自然さで消去できる
条文を全部暗記していなくても、日本語として自然かどうかである程度絞れます。
- 「環境の( )が良好な状態に保持される」→ 「自然的構成要素」がぴったり
- 「生態系の( )、生物の( )が図られる」→ どちらも同じ語句が2回入る → 「多様性の確保」が自然
- 「人と自然との( )が保たれる」→ 「調和」もありそうだが、条文を知っていれば「豊かな触れ合い」であることが分かる
ポイント③ 似たキーワードの取り違えに注意
- 「調和」:基本理念(第3条など)で出てくる
- 「豊かな触れ合い」:第14条第3号で出てくる
どの条文にどの表現が使われているかを意識して整理しておくと、公害総論の条文穴埋めに強くなります。
まとめると、この問題は「第14条のキーワード3本柱= 自然的構成要素・多様性の確保・豊かな触れ合い」を正しく思い出せるかどうかを問う基本問題です。条文を「意味のかたまり」で理解しながら、何度か音読して体に覚えさせておくと、試験本番でかなり心強くなります。


コメント