
公害防止管理者の過去問|令和4年 公害総論 問8 問題と解説

目次
問題8
成層圏オゾン層破壊の原因となる化合物(ハロカーボン類)のうち、大気中の濃度が最近まで増え続けてきたものはどれか。
- CFC:クロロフルオロカーボン
- Halon:ハロン
- HCFC:ハイドロクロロフルオロカーボン
- 四塩化炭素
- CFC-12
- Halon-1211
- HCFC-22
- 1,1,1-トリクロロエタン
問題8の解答
正解は「3」です。
問題8の解説
この問題は、成層圏オゾン層破壊の原因となるハロカーボン類のうち、「大気中の濃度が最近まで増え続けてきたもの」はどれか?を問うものです。
ポイントは、各物質の大気中濃度の“時間変化(増加→ピーク→減少)”をきちんと押さえているかです。
環境省・気象庁・WMO/NOAA が公表している観測データ・評価報告書から、選択肢に挙がっている物質の大気中濃度の傾向を確認します。
HCFC-22 の濃度は、モントリオール議定書で規制されつつも、近年まで増加傾向。WMO 世界データセンター(WDCGG)の要約では、HCFC-22 など HCFC 類について次のように記載されています。
「HCFC-22、HCFC-141b および HCFC-142b のモル分率は増加している。」
また、最新の要約では、「HCFC-22 のモル分率は、2000年代ほどの速い増加ではなくなったものの、依然として増加を続けている」と記載されている。
つまり、CFC 類や 1,1,1-トリクロロエタン、四塩化炭素などはすでにピークを過ぎて減少に転じている中で、HCFC-22 は“増加は鈍化したが、最近まで増え続けている”代表的な物質です。したがって、「最近まで大気中濃度が増え続けてきたもの」として正しく選べるのは3. HCFC-22 となります。
なぜ選択肢3が正解か?
- CFC-12:2003年頃にピーク → その後減少
- Halon-1211:2000年代以降は横ばい〜減少傾向
- 1,1,1-トリクロロエタン:1992年にピーク → その後急減
- 四塩化炭素:1991年頃にピーク → その後緩やかに減少
- HCFC-22:2000年代〜2010年代を通じて 濃度が増加を続け、最近まで増加トレンド
という関係になっています。したがって、「最近まで増え続けてきた」と言えるのは HCFC-22(選択肢3) だけであり、問題文が問う「誤っているもの」(=他の選択肢はこの条件に当てはまらない)として3 を選ぶのが正解となります。
問題を解くポイント
- モントリオール議定書の経済学的ストーリーをイメージする
- 先に CFC・CCl₄・CH₃CCl₃ など旧来の ODS(オゾン層破壊物質)が規制 → 大気中濃度が減少に転じる
- その代替として HCFC 類(特に HCFC-22)が使われる → HCFC-22 はしばらく増加
- 「ピーク年」をざっくり覚える
- CFC-11:1992年頃ピーク
- CFC-12:2003年頃ピーク
- CH₃CCl₃:1992年頃ピーク
- CCl₄:1991年頃ピーク
- HCFC=“過渡期の代替物質”という位置づけ
- CFC → 規制・全廃
- HCFC → 一時的な代替(段階的な廃止スケジュール)
- HFC → オゾン層は壊さないが温暖化問題で新たに規制対象に


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