
公害防止管理者の過去問|令和3年 公害総論 問8 問題と解説

問題8
有害大気汚染物質に関する記述中、下線を付した箇所のうち、誤っているものはどれか。
(1)23の優先取組物質が指定されており、このうちの(2)ベンゼン、(3)トリクロロエチレン、(4)テトラクロロエチレン、及び、(5)水銀及びその化合物の4物質には、大気濃度について環境基準が定められている。
問題8の解答
正解は「5」です。
問題8の解説
この問題は、有害大気汚染物質のうち「優先取組物質」の数、そして、その中で「大気濃度の「環境基準」が定められている物質はどれか?」を正しく理解しているかを問う問題です。
結論から言うと、環境基準が定められている有害大気汚染物質は、ベンゼン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタンの4物質であり、水銀及びその化合物は「指針値」が設定されている物質であって、環境基準ではありません。
ため、「(5)水銀及びその化合物」としている記述が誤りとなります。
(1) 23の優先取組物質→正しい
環境省「有害大気汚染物質対策等」のページによると、平成22年10月の中央環境審議会答申(第9次答申)において、「有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質」が 248物質、「優先取組物質」が 23物質 に見直されました。同ページには、「優先取組物質(23物質)」として具体的な物質名も列挙されています。
(2) ベンゼン・(3) トリクロロエチレン・(4) テトラクロロエチレンン→正しい
選択肢文では、(2)〜(5) のうち「大気濃度について環境基準が定められている 4 物質」として挙げています。環境省「有害大気汚染物質対策等」ページに、次のように記載されています。
・ベンゼン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタンについては環境基準が設定されています。
- (2) ベンゼン
- (3) トリクロロエチレン
- (4) テトラクロロエチレン
この3つは、いずれも 環境基準が定められている物質であることから正しい部分です。
(5) 水銀及びその化合物→誤り:正解
問題文では、環境基準が設定されている4物質の一つとして「水銀及びその化合物」を挙げています。
しかし、先ほどの環境省公式ページをもう一度見ると、環境基準が設定されているのはベンゼン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタン の4物質のみです。
一方で、水銀についてはどう書かれているかというと、アクリロニトリル、塩化ビニルモノマー、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、水銀及びその化合物、ニッケル化合物、ヒ素及びその化合物、1,3-ブタジエン、マンガン及びその化合物 については 指針値が設定されています。
つまり、水銀及びその化合物 は「指針値」が設定されている物質であり、環境基準があるわけではないのです。
問題を解くポイント
ポイント1:有害大気汚染物質の「環境基準」と「指針値」を混同しない
- 環境基準がある有害大気汚染物質(4物質)
- ベンゼン
- トリクロロエチレン
- テトラクロロエチレン
- ジクロロメタン
- 指針値がある有害大気汚染物質(11物質など)
- アクリロニトリル
- 塩化ビニルモノマー
- クロロホルム
- 1,2-ジクロロエタン
- 水銀及びその化合物
- ニッケル化合物
- ヒ素及びその化合物
- 1,3-ブタジエン
- マンガン及びその化合物
- アセトアルデヒド
- 塩化メチル など
ここを整理して覚えると、環境基準 vs 指針値のひっかけに強くなります。
ポイント2:「ベンゼン等 4物質」という定番フレーズを覚える
- 公害総論では、「ベンゼン等 4物質 に係る環境基準」としてこの 4つが頻出です。
ベンゼン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタン
多くの自治体資料でも「環境基準がある有害大気汚染物質(ベンゼン等 4物質)」として整理されており、
記憶にも残りやすいパターンです。
ポイント3:水銀は「指針値」「水俣条約」の文脈で出る
水銀は大気環境では、
- 有害大気汚染物質の 指針値対象
- かつ、水俣条約に基づき 排出削減・使用削減の対象
として重要ですが、「環境基準」ではなく「指針値」という点を押さえておきましょう。


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