公害防止管理者の過去問|令和5年 公害総論 問8 問題と解説

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問題8

揮発性有機化合物(VOC)に関する記述中、下線を付した箇所のうち、誤っているものはどれか。

VOCについては、(1)2000(平成12)年度の推定排出量を、2010(平成22)年度に(2)5割程度削減することを目標として、大気汚染防止法の改正が行われた。

塗装、印刷、(3)接着などの大規模排出源への(4)排出濃度による規制に加えて、その他の事業所における(5)自主的取り組みの推進が主な改正点であった

問題8の解答

正解は「2」です。

問題8の解説

この問題は、VOC 対策として大気汚染防止法が改正されたときの目標値と、規制の考え方を問うものです。
下線(1)〜(5)のうち、どこが条文や当時の政府方針と違うかを見ていきます。

①まず、実際のVOC削減目標は?

環境省の「VOC排出抑制対策検討会報告書」や環境基本計画では、次のように定められています。

  • 基準年度:2000(平成12)年度
  • 目標年度:2010(平成22)年度
  • 削減目標:2000年度の排出量から「おおむね3割程度(30%程度)削減」

つまり、「5割(50%)削減」ではなく「3割(30%)削減」が正しい目標値です。これを頭に入れて、各下線部をチェックします。

②各下線部の正誤判定

(1) 2000(平成12)年度の推定排出量

VOCについては、2000(平成12)年度の推定排出量を、2010年度に…

→ 実際の基準年度は 2000年度 なので、ここは 正しい です。

(2) 2010(平成22)年度に「5割程度削減」

…2010(平成22)年度に5割程度削減することを目標として…

→ ここが 誤り です。

本当の目標は「2000年度比で3割程度削減」であり、「5割(50%)削減」は実績としてはそのくらいまで進んだものの、政策目標としては30%削減でした。したがって、(2) が 誤り(=正解) となります。

(3) 塗装、印刷、接着などの大規模排出源

塗装、印刷、接着などの大規模排出源…

VOC の主な排出源としては、

  • 自動車補修・金属・プラスチック等の 塗装工程
  • グラビア、オフセットなどの 印刷工程
  • 製造業等における 接着剤の使用工程

が挙げられており、環境省の資料でも大規模排出源として例示されています。(3) は 正しい 記述です。

(4) 排出濃度による規制

…大規模排出源への排出濃度による規制に加えて…

VOC規制で導入されたのは、大気汚染防止法における 特定施設(塗装ブースや乾燥設備など)への排出基準です。これは排出口におけるVOC濃度(ppmC など)で定められる「濃度基準」です。つまり、「排出濃度による規制」という表現は正しく、「総量規制」ではなく「濃度規制(+設備・管理基準)」 が採用されました。 (4) は 正しい 記述です。

(5) その他の事業所における自主的取り組みの推進

…その他の事業所における自主的取り組みの推進が主な改正点…

大規模な特定施設を持つ事業所には法的規制を課しつつ、それ以外の多数の中小事業所等については、事業者団体の自主行動計画やマニュアル作成や溶剤管理の改善などの 自主的取組の支援・促進によって排出を減らす、というのがVOC対策の基本方針でした。

(5) も 正しい 記述です。

③問題を解くポイント

  1. 数字(年度と削減率)をセットで覚える
    • 基準年:2000年度
    • 目標年:2010年度
    • 目標:3割(30%)削減
      → 「VOCは 2000→2010 で 3割減」をフレーズで記憶。
  2. VOC規制=大規模は“濃度規制+設備基準”、中小は“自主的取組”
    • 大規模:特定施設に排出濃度基準+構造・使用・管理基準
    • その他:自主的削減の促進
      → 「濃度規制がある」という点をおさえておくこと。
  3. “5割削減”は実績値と混同しない
    • 実際には2010年度時点で 5割近くまで減ったが、
      “目標値は 3割” というところを取り違えないようにする。

この3点を押さえておけば、VOC対策の数字や仕組みを問う問題に強くなります。

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本記事の監修者

ISEED編集部は、環境技術、環境倫理、環境に関する資格について読者に有益な情報を調査・配信しています。記事制作においてリサーチ、構成、ライティング、編集、グロースハックの仕組みを適切に設計することで読者にわかりやすい文章を作ることを心がけています。

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