公害防止管理者の過去問|令和7年 公害総論 問14 問題と解説

公害防止管理者の過去問|令和7年 公害総論 問14 問題と解説
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問題14

ダイオキシン類に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. ダイオキシン類は廃棄物焼却などの事業活動によって環境中に排出されるが、一部は焚き火、火災、火山活動などによっても排出される。
  2. ダイオキシン類対策特別措置法で定義されているのは、ポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(PCDD)、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)及びコプラナーポリ塩化ビフェニル(コプラナーPCB)である。
  3. PCDDとPCDFは塩素の数や位置によって異性体があり、PCDDの異性体の種類は、PCDFの異性体の種類より多い。
  4. ダイオキシン類の毒性等価係数(TEF)は、2,3,7,8-TeCDDの毒性を1として表したものである。
  5. 2,3,7,8-TeCDDは水に溶けにくく、20℃ではほとんど気化しない。

問題14の答え

正解は「3」です。

問題14の解説

ひとつずつ事実関係を確認していきます。

選択肢1

ダイオキシン類は廃棄物焼却などの事業活動によって環境中に排出されるが、一部は焚き火、火災、火山活動などによっても排出される。

  • ダイオキシン類は廃棄物焼却施設、金属精錬などの人為起源、焚き火、森林火災、火山活動などの自然起源からも生成・放出されることが知られています。
  • 環境省の資料でも、主要な発生源として「廃棄物焼却」が挙げられる一方、自然界でも燃焼過程により生成されうると説明されています。

人為的な廃棄物焼却が主だが、焚き火・火災・火山など自然の燃焼現象からも一部発生する、という記述は正しいです。

選択肢2

ダイオキシン類対策特別措置法で定義されているのは、ポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(PCDD)、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)及びコプラナーポリ塩化ビフェニル(コプラナーPCB)である。

ダイオキシン類対策特別措置法第2条では、ダイオキシン類を以下の3つからなる化合物群として定義しています。

  • ポリ塩化ジベンゾ-p-ジオキシン(PCDD)
  • ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)
  • コプラナーポリ塩化ビフェニル(コプラナーPCB)

👉 法の定義どおりで、正しい記述です。

選択肢3(誤り:これが正解肢)

PCDDとPCDFは塩素の数や位置によって異性体があり、PCDDの異性体の種類は、PCDFの異性体の種類より多い。

ここがこの問題のポイントです。

PCDDとPCDFの異性体数

  • PCDD(ポリ塩化ジベンゾ-p-ジオキシン)は塩素の数・位置の違いによる異性体は 75種類 とされています。
  • PCDF(ポリ塩化ジベンゾフラン)は異性体は 135種類 存在すると整理されています。

※これは公害防止管理者テキストやダイオキシン類の基礎資料で必ず出てくる定番の数字です。

したがって、PCDD:75種類PCDF:135種類であり、「PCDDの異性体の種類は、PCDFより多い」という記述はです。よって、選択肢3は誤りになります。

選択肢4

ダイオキシン類の毒性等価係数(TEF)は、2,3,7,8-TeCDDの毒性を1として表したものである。

  • TEF(Toxic Equivalency Factor:毒性等価係数)は、ダイオキシン類各異性体などの毒性を、「2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ジオキシン(2,3,7,8-TCDD) の毒性を 1 としたときの相対値」で表したものです。
  • 各異性体ごとに「2,3,7,8-TCDDの何分の1の毒性か?」という比率を決めておき、濃度×TEFを合計して TEQ(毒性等量) を算出します。

👉 「2,3,7,8-TCDDの毒性を 1 として表したもの」という説明はTEFの定義そのもので、正しいです。(※TeCDD は “Tetra-CDD” の意味で、2,3,7,8-TCDD と同じことを指しています)

選択肢5

2,3,7,8-TeCDDは水に溶けにくく、20℃ではほとんど気化しない。

  • 2,3,7,8-TCDDは、強い疎水性(脂溶性)、非常に水に溶けにくいという物性を持っています。
  • そのため、環境中では水よりも土壌・底質・生物体内(脂肪組織)に蓄積しやすいことが問題になります。

👉 「水に溶けにくく、20℃でほとんど気化しない」という記述は、2,3,7,8-TCDDの性状を正しく表しており、正しいです。

問題を解くポイント

  1. 異性体数の「75 と 135」をセットで暗記
    • PCDD:75
    • PCDF:135
      → 「7(PCDD) と 13(PCDF)の順で増える」と覚えると、「PCDD>PCDF」と逆に書かれていたらすぐ気づけます。
  2. ダイオキシン類の“3本柱”を整理しておきましょう。
    • 対策特措法上のダイオキシン類=PCDD、PCDF、コプラナーPCB
    • 毒性評価=2,3,7,8-TCDDを1としたTEF
    • 物性=難水溶性、難揮発性、高脂溶性
  3. 焼却・自然起源・環境中挙動の基本像
    • 主発生源:廃棄物焼却などの高温燃焼
    • 自然由来:火災・火山など
    • 環境中:水より土壌・底質・生物体脂肪に蓄積

このあたりを押さえておくと、ダイオキシン類の基礎問題は安定して正解できるようになります。

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本記事の監修者

ISEED編集部は、環境技術、環境倫理、環境に関する資格について読者に有益な情報を調査・配信しています。記事制作においてリサーチ、構成、ライティング、編集、グロースハックの仕組みを適切に設計することで読者にわかりやすい文章を作ることを心がけています。

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