
公害防止管理者の過去問|令和7年 公害総論 問10 問題と解説

問題10
公共用水域の水質汚濁の現状に関する記述として、誤っているものはどれか(環境省:令和4年度公共用水域水質測定結果による)。
- 人の健康の保護に関する環境基準(健康項目)は、公共用水域全体では99%以上の地点で達成されていた。
- 河川、湖沼、海域のうち、健康項目の環境基準達成率が最も低いのは河川であった。
- 河川、湖沼、海域のうち、BOD又はCODの環境基準達成率が最も低いのは湖沼であった。
- 全シアンに関しては、環境基準を超過した地点はなかった。
- カドミウム、鉛、六価クロム、ひ素、総水銀のうち、環境基準を超過した地点数が最も多かった健康項目は、六価クロムであった。
問題10の答え
正解は「5」です。
問題10の解説
令和4年度「公共用水域水質測定結果」の概要から、各記述が正しいかどうかを確認していきます。
選択肢1
人の健康の保護に関する環境基準(健康項目)は、公共用水域全体では99%以上の地点で達成されていた。
環境省の報告では、「健康項目全体(27項目)の環境基準達成率は 99.1%」とされています。「99%以上の地点で達成」という表現と一致します。正しい記述です。
選択肢2
河川、湖沼、海域のうち、健康項目の環境基準達成率が最も低いのは河川であった。
健康項目の環境基準値を超過した地点について、報告書では次のように書かれています。
・環境基準値の超過はカドミウム、鉛、砒素、総水銀、1,2-ジクロロエタン、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素、ふっ素の7項目で のべ48地点
・水域群別では、河川が6項目のべ45地点、湖沼が2項目のべ3地点、海域は超過地点なし
海域は超過ゼロなので達成率はほぼ100%。超過地点のほとんど(45/48)が河川であり、湖沼の超過地点数は少ないことから、達成率が最も低いのは河川であるといえます。
👉 正しい記述です。
選択肢3
河川、湖沼、海域のうち、BOD又はCODの環境基準達成率が最も低いのは湖沼であった。
BOD/CODについて、報告書ではそれぞれ次のように示されています。
- 河川のBOD 類型指定水域(2,570水域)における環境基準達成率は 92.4%
- 湖沼のCOD 類型指定水域(191水域)における環境基準達成率は 50.3%
- 海域のCOD 類型指定水域(590水域)における環境基準達成率は 79.8%
3つを比べると:
河川 92.4%
湖沼 50.3%
海域 79.8%
となり、最も低いのは湖沼であることが分かります。 正しい記述です。
選択肢4
全シアンに関しては、環境基準を超過した地点はなかった。
健康項目のうち、環境基準値の超過があった項目は次の7つです。
カドミウム、鉛、砒素、総水銀、1,2-ジクロロエタン、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素、ふっ素
ここに全シアン(全シアン化合物)は含まれていません。つまり、令和4年度において全シアンで基準超過した地点はなかったということです。正しい記述です。
選択肢5(誤り)
カドミウム、鉛、六価クロム、ひ素、総水銀のうち、環境基準を超過した地点数が最も多かった健康項目は、六価クロムであった。
先ほどのとおり、環境基準値超過があった健康項目7つの中に含まれていたのは、
- カドミウム
- 鉛
- 砒素(ひ素)
- 総水銀
- 1,2-ジクロロエタン
- 硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素
- ふっ素
であり、六価クロムは入っていません。
したがって、六価クロムの超過地点数はゼロであるはずで、「最も多かった」とする記述は、明らかに誤りです。なお、「最も多かった」のは一般に砒素などですが、ここではそこまで言えなくても、「六価クロムではない」ことが分かれば十分です。 よって、この選択肢が誤りであり、本問の正解となります。
問題を解くポイント
- 概要の「文章部分」を読むクセをつける
- 表やグラフだけでなく、「測定結果の概要」の本文に、
- 健康項目全体の達成率(99.1%)
- 超過があった項目名
- BOD/COD達成率の水域別比較
など、試験にそのまま出る文章がまとまっています。
- 表やグラフだけでなく、「測定結果の概要」の本文に、
- 「どの項目で超過が出たか」をセットで覚える
- 健康項目で令和4年度に超過があったのは
→ Cd、Pb、As、総水銀、1,2-DCE、硝酸性窒素等、ふっ素 - 特に試験で名前が出やすい重金属類(Cd、Pb、As、Hg、シアン etc.)は、
「誰が超過」「誰は超過なし」まで整理しておくと、今回のような問題に強くなります。
- 健康項目で令和4年度に超過があったのは
- BOD・COD達成率は「湖沼が一番悪い」をキーワードに
- 河川:9割台前半
- 湖沼:5割程度
- 海域:8割弱
というざっくりしたイメージだけでも押さえておくと、
「どの水域が最も達成率が低いか」を問う問題はすぐに解けます。


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