
公害防止管理者の過去問|令和7年 公害総論 問3 問題と解説

問題3
環境基本法第二章第16条に規定する環境基準に関する記述中、下線部分(a~j)の用語の組合せとして、誤りを含むものはどれか。
1 ⒜政府は、大気の汚染、水質の汚濁、⒝土壌の汚染及び騒音に係る環境上の条件について、それぞれ、人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で⒞維持されることが望ましい基準を定めるものとする。
2 前項の基準が、二以上の類型を設け、かつ、それぞれの類型を当てはめる地域又は水域を指定すべきものとして定められる場合には、その地域又は水域の指定に関する事務は、次の各号に掲げる地域又は水域の区分に応じ、当該各号に定める者が行うものとする。
一 二以上の都道府県の区域にわたる地域又は水域であって⒟政令で定めるもの ⒜政府
二 前号に掲げる地域又は水域以外の地域又は水域 次のイ又はロに掲げる地域又は水域の区分に応じ、当該イ又はロに定める者
イ 騒音に係る基準(航空機の騒音に係る基準及び新幹線鉄道の列車の騒音に係る基準を除く。)の類型を当てはめる地域であって⒠市に属するもの その地域が属する⒡都道府県の知事
ロ イに掲げる地域以外の地域又は水域 その地域又は水域が属する⒢市の長
3 第1項の基準については、⒣常に適切な科学的判断が加えられ、必要な改定がなされなければならない。
4 ⒜政府は、この章に定める施策であって⒤公害の防止に関係するものを⒥総合的かつ有効適切に講ずることにより、第1項の基準が確保されるように努めなければならない。
- a、b
- c、d
- e、h
- f、g
- i、j
問題3の答え
正解は「4」です。
問題3の解説
まず、環境基本法第16条の条文そのものを押さえてから、どこが違うのかを一つずつ確認していきます。
① 条文の原文をまず確認する
環境基本法第16条は次のような内容です。
第十六条 政府は、大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染及び騒音に係る環境上の条件について、それぞれ、人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準を定めるものとする。
2 前項の基準が、二以上の類型を設け、かつ、それぞれの類型を当てはめる地域又は水域を指定すべきものとして定められる場合には、その地域又は水域の指定に関する事務は、次の各号に掲げる地域又は水域の区分に応じ、当該各号に定める者が行うものとする。
一 二以上の都道府県の区域にわたる地域又は水域であって政令で定めるもの 政府
二 前号に掲げる地域又は水域以外の地域又は水域 次のイ又はロに掲げる地域又は水域の区分に応じ、当該イ又はロに定める者
イ 騒音に係る基準(航空機の騒音に係る基準及び新幹線鉄道の列車の騒音に係る基準を除く。)の類型を当てはめる地域であって市に属するもの その地域が属する市の長
ロ イに掲げる地域以外の地域又は水域 その地域又は水域が属する都道府県の知事
3 第一項の基準については、常に適切な科学的判断が加えられ、必要な改定がなされなければならない。
4 政府は、この章に定める施策であって公害の防止に関係するもの(以下「公害の防止に関する施策」という。)を総合的かつ有効適切に講ずることにより、第一項の基準が確保されるように努めなければならない。
② 各下線部が条文と合っているかをチェック
問題文の下線部を、条文と照らし合わせて確認します。
■ 1 行目関係(a~c)
⒜政府は、大気の汚染、水質の汚濁、⒝土壌の汚染及び騒音 …
… 生活環境を保全する上で⒞維持されることが望ましい基準…
- ⒜ 政府 → 条文どおり 「政府」 ✅
- ⒝ 土壌の汚染 → 条文も 「土壌の汚染」 ✅
- ⒞ 維持されることが望ましい基準 → 条文どおり ✅
👉 a,b,c はすべて正しい。
■ 2 行目関係(d~g)
一 二以上の都道府県の区域にわたる地域又は水域であって⒟政令で定めるもの ⒜政府
- ⒟ 政令で定めるもの → 条文どおり 「政令で定めるもの」 ✅
- その指定権者 ⒜政府 → 条文どおり 政府 ✅
イ … 地域であって⒠市に属するもの その地域が属する⒡都道府県の知事
ロ イに掲げる地域以外の地域又は水域 その地域又は水域が属する⒢市の長
条文と比べると、
- 「市に属するもの」 → 正しく条文どおり(イの条件部分)
- ただし、指定権者は本来
- イ:市に属するもの → 「その地域が属する市の長」
- ロ:イ以外 → 「その地域又は水域が属する都道府県の知事」
ところが、問題文では逆になっています。
- ⒠ 市に属するもの → 条文どおりで 正しい(条件の部分)
- ⒡ 都道府県の知事 → 本来ここは 「市の長」 なので 誤り
- ⒢ 市の長 → 本来ここは 「都道府県の知事」 なので 誤り
👉 まとめると
- e(市に属するもの)… 正しい
- f(都道府県の知事)… 誤り(位置が逆)
- g(市の長)… 誤り(位置が逆)
■ 3 行目関係(h)
⒣常に適切な科学的判断が加えられ…
- ⒣ 常に適切な科学的判断 → 条文どおり 「常に適切な科学的判断が加えられ」
👉 h は正しい。
■ 4 行目関係(i,j)
⒜政府は、この章に定める施策であって⒤公害の防止に関係するものを⒥総合的かつ有効適切に講ずることにより…
- ⒤ 公害の防止に関係するもの
→ 条文どおり(ここから「公害の防止に関する施策」と定義) ✅環境省 - ⒥ 総合的かつ有効適切に
→ 条文どおり 「総合的かつ有効適切に」 ✅
👉 i,j はともに正しい。
③問題を解くポイント
ポイント1:第16条第2項の「誰が指定するか」のパターン
類型を当てはめる地域・水域を誰が指定するかは、次の「階層構造」で覚えるとスッと入ります。
- 広域(2以上の都道府県)
→ 政府 - それ以外
- 騒音基準(航空機・新幹線騒音を除く)で、かつ市に属する地域
→ 市の長 - 上記以外の地域・水域
→ 都道府県の知事
- 騒音基準(航空機・新幹線騒音を除く)で、かつ市に属する地域
この問題は 「市の長」と「都道府県の知事」をあえて入れ替えて、ひっかけています。
ポイント2:誰が指定するか=「スケール」で覚える
- 全国レベル・複数県またぎ → 政府
- 市の中の騒音問題 → 市が主体 → 市の長
- その他広めの地域・水域 → 都道府県の知事
というように、「問題のスケールが大きいほど上位の機関が決める」とイメージすると覚えやすいです。
まとめると、この問題は以下を確認する問題です。
- 第16条第1項・3項・4項のキーフレーズが合っているか?
- 特に第2項の地域指定権者(政府/市長/知事)の対応関係を正しく理解しているか?
条文を丸暗記というより、「誰がどの範囲を担当するのか」という構図で押さえておくと、公害防止管理者試験でも応用が利きます。


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