
公害防止管理者の過去問|令和4年 大規模水質特論 問7 問題と解説
問題7
製鉄所の各プロセスの排水に関する記述として、誤っているものはどれか。
- コークス製造工程で、コークス炉ガスに水を噴霧して冷却する際に発生する凝縮水は安水と呼ばれ、脱安ストリッパーでアンモニア及びシアンを低減した後に活性汚泥処理される。
- 熱間圧延工程の直接冷却水は、鋼板等の製品に直接噴射された水であり、製品表面に生成する酸化鉄のスケール、潤滑油や圧延油などのn‒ヘキサン抽出物を含む。
- 冷間圧延には、酸洗、冷間圧延、電解清浄、焼きなまし、調質圧延の工程が含まれ、この内、酸洗からの濃厚廃液には鉄や塩酸(又は、硫酸)が含まれる。
- クロメート処理工程からの排水は、三価クロムや亜鉛を含む。三価クロムは酸性でもアルカリ性でも沈殿しないので、酸化剤を用いて六価クロムにしてから沈殿除去する。
- 電解脱脂工程では、アルカリ性の脱脂液の取り替えから濃厚廃液が、脱脂後の洗浄から水洗排水が排出される。排水には油脂分、酸化鉄、界面活性剤などが含まれる。
問題7の解答
正解は「4」です。
問題7の解説
この問題は、製鉄所の各工程排水について、「どんな物質が含まれるか」と「どう処理するか(処理の筋道)」が、現実の処理方法として整合しているかを問う概念問題です。
④が誤りなのは、三価クロム(Cr(III))は「酸性でもアルカリ性でも沈殿しない」わけではなく、一般にpHをアルカリ側に調整すると水酸化クロム Cr(OH)₃ として沈殿除去できるためです。
したがって、④が述べるように「酸化剤で六価クロムにしてから沈殿除去する」という流れは、処理の考え方として逆向きで不適切です。六価クロム(Cr(VI))は毒性が高く、通常は還元して三価にしてから沈殿が基本となります。
解答に至るまでのステップ
ステップ1 クロム排水処理の基本の流れを確認する
このステップでは、「六価クロム」と「三価クロム」の性質と、一般的な処理の順序を確認します。理由は、④は処理の順番そのものを述べており、ここが正誤判定の核心だからです。
- 六価クロム(Cr(VI)):毒性が強く、溶けた形で存在しやすい。
- 三価クロム(Cr(III)):六価に比べて毒性が低く、pHを上げると水酸化クロムとして沈殿させやすい。
したがって、一般的な排水処理は「六価を還元して三価にする → pHを上げて沈殿除去」という流れになります。
ステップ2 ④の主張を一つずつ点検する
④は次の2点を主張しています。
- 「クロメート処理工程の排水は三価クロムや亜鉛を含む」
→ 工程条件によっては三価クロム・亜鉛が含まれること自体はあり得ます。 - 「三価クロムは酸性でもアルカリ性でも沈殿しないので、酸化剤で六価にしてから沈殿除去する」
→ ここが誤りです。
三価クロムは、一般に アルカリ側で Cr(OH)₃ として沈殿させることが可能です。また、三価をわざわざ酸化して六価にすることは、毒性の高い形態を増やす方向であり、処理の思想として不適切です。よって④は誤りになります。
ステップ3 他の選択肢が工程排水の説明として自然か確認する
最後に、①②③⑤が工程排水の一般的理解として整合していることを確認し、誤りが④であることを固めます。
- ① 安水(凝縮水)の脱安ストリッパー後に生物処理、という流れは「揮発性成分(アンモニア等)を前段で減らしてから生物処理」の考え方として自然です。
- ② 熱間圧延の直接冷却水にスケール・油分(n-ヘキサン抽出物)が含まれるのは工程の実態として自然です。
- ③ 酸洗の濃厚廃液に鉄と酸(塩酸・硫酸)が含まれるのも工程理解として自然です。
- ⑤ 電解脱脂で濃厚廃液と水洗排水が出て、油脂分や界面活性剤等を含むのも自然です。
問題のポイント
この問題で最も重要なのは、④のように処理方法が書かれている選択肢では、「毒性の高い形に変える方向になっていないか」と、「沈殿が起きるpHの方向が合っているか」を確認することです。
④は、三価クロムが沈殿しないと断定している点さらに六価に酸化してから沈殿除去するという“逆向き”の手順の2つが重なって不適切になっています。


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