
公害防止管理者の過去問|令和4年 大規模水質特論 問9 問題と解説
問題9
製紙工場の排水処理に関する記述として、不適切なものはどれか。
- 白水回収には主に凝集沈殿法が用いられる。
- 黒液中のナトリウムや硫黄は、カセイ化工程により水酸化ナトリウムや硫化ナトリウムに再生され、蒸解工程で使用される。
- 黒液の濃縮工程で蒸発した水蒸気は、凝縮後、温水として洗浄工程で利用することができる。
- 酸素脱リグニンの導入により、排水へのBOD負荷は削減できる。
- スラッジボイラーで得られた熱エネルギーは、蒸気として紙の乾燥工程などに利用され、発生した焼却灰はセメント原料などに再利用することが可能である。
問題9の解答
正解は「1」です。
問題9の解説
この問題は、製紙工場の排水処理・回収工程について、「どの対策が、どの負荷(BOD/COD・色度・SSなど)を下げるのか」を落ち着いて整理できるかを問う概念問題です。
④が不適切なのは、酸素脱リグニン(Oxygen delignification)は主としてリグニン(難分解性有機物、色度やCODの原因になりやすい成分)を減らし、後段の漂白薬品使用量や排水の色・有機負荷(特にCOD)を低減することを狙う工程であり、BOD負荷の削減を主目的として強く言い切るのは適切ではないためです。
BODは「生物が分解しやすい有機物」の指標であり、酸素脱リグニンの主対象であるリグニンは一般にBOD寄与が相対的に小さく、むしろCOD・色度の側面で語られることが多い、という整理になります。
解答に至るまでのステップ
ステップ1 製紙工場で「BOD」と「COD」が何由来かを確認する
このステップでは、④がBODについて述べているため、まずBODとCODの意味の違いを確認します。
- BOD:微生物が比較的分解しやすい有機物(糖類や低分子有機酸など)が主に効きます。
- COD:分解されにくい有機物も含めた酸化されうる有機物全体に対応し、リグニンなどが影響しやすい指標です。
この違いを押さえると、「リグニンを減らす工程=BODが大きく減る」とは言いにくいことが見えてきます。
ステップ2 酸素脱リグニンが「何を減らす工程か」を整理する
酸素脱リグニンは文字通り、パルプ中のリグニンを酸素・アルカリ条件で分解して減らす工程です。導入の主要な狙いは、
- 後段漂白で必要となる薬品(塩素系など)を減らす
- それに伴い排水の色度や有機負荷(特にCOD)を低減する
- AOX等の問題を抑える
といった方向です。したがって、④のように「BOD負荷は削減できる」とBODに焦点を当てて断定するのは、工程の効果の説明としては不適切(焦点がずれている)と判断できます。
ステップ3 ①②③⑤が全体として自然であることを確認する
最後に、他の選択肢が製紙工場の回収・省資源の説明として自然かを確認します。
- ① 白水回収:白水(繊維・微細固形分を含む水)は凝集沈殿などで固形分回収を行う説明として自然です。
- ② 黒液の薬品回収:黒液中のNaやSは回収工程(回収ボイラ→苛性化など)を経て白液成分(NaOH、Na₂S)として再生され、蒸解に戻るのはクラフト法の基本です。
- ③ 黒液濃縮の凝縮水利用:蒸発凝縮水を温水として工程に再利用するのは熱回収の考え方として自然です。
- ⑤ スラッジボイラの利用:蒸気利用(乾燥工程等)や焼却灰の再利用(用途は条件によりますが可能性として)は資源循環の説明として自然です。
問題のポイント
この問題は、「工程名を覚える」よりも、その工程が主に下げるのはBODなのか、COD(や色度)なのかを丁寧に整理することが重要です。酸素脱リグニンは“リグニン対策”ですので、排水負荷の文脈では COD・色度・漂白薬品負荷のほうが説明の中心になります。④はそこをBODに寄せて断定している点が不適切です。


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