
公害防止管理者の過去問|令和3年 大規模水質特論 問10 問題と解説
問題10
食料品製造業における排水処理に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 水質汚濁防止法における特定施設として、原料処理施設、洗浄施設、湯煮施設などがある。
- 日平均排水量50m3/日未満の小規模事業場も都道府県条例により排水基準が定められることがある。
- 水質変動が大きい清涼飲料工場からの総合排水に対して、ラグーン方式を用いることで排水処理の負荷変動を緩和することが可能である。
- ビール工場の排水処理において、活性汚泥法の前段にUASBを導入することで、曝気(ばっき)動力と汚泥発生量を低減することができる。
- 清涼飲料工場における排水中の有機物のほとんどは嫌気的分解が困難なため、UASBは適用できない。
問題10の解答
正解は「5」です。
問題10の解説
⑤は、清涼飲料工場の排水の性質を取り違えています。
清涼飲料の排水は、砂糖・糖液・果汁など由来の“分解されやすい有機物(易分解性COD/BOD)”が多いのが一般的で、むしろ、UASB(嫌気処理)が適用されやすい分野です。したがって「嫌気的分解が困難だからUASBは適用できない」という断定は不適当です。
解答に至るまでのステップ
ステップ1 各選択肢が何を主張しているかを“超シンプル”に整理する
このステップでは、選択肢が「法律の話」なのか「処理技術の話」なのかを切り分けます。
- ①:水質汚濁防止法の特定施設の例(法令・制度の話)
- ②:小規模でも条例等で基準が決まることがある(制度運用の話)
- ③:負荷変動が大きい排水にラグーンで緩衝できる(設計の話)
- ④:ビール排水でUASB→活性汚泥により省エネ・汚泥減(技術の話)
- ⑤:清涼飲料排水は嫌気分解が難しいからUASB不可(排水性状の断定)
この中で、⑤だけが「排水の性質そのもの」を強く断定しており、ここが最も検討価値が高いポイントになります。
ステップ2 清涼飲料工場の排水が“嫌気で分解しにくい”と言えるかを確認する
このステップでは、清涼飲料排水の典型的な中身を考えます。なぜなら、UASBが適用できるかは「有機物の分解されやすさ」でほぼ決まるからです。清涼飲料工場の排水は、工程由来としては概ね次のようなものが中心です。
- 糖液・果汁・シロップのロス
- 製品の切替や洗浄(CIP)に伴う有機物
- 原料や製品のこぼれ・回収水
これらは多くの場合、糖類などの易分解性有機物が主体です。易分解性有機物は嫌気微生物にとって“エサ”になりやすく、嫌気処理(UASBなど)で有機物を削減しやすい性質です。
したがって、⑤の「有機物のほとんどは嫌気的分解が困難」という前提自体が一般的でなく、結論(UASB適用不可)も成り立ちにくいため、誤りと判断できます。
ステップ3 他の選択肢が“現場感として自然”かを確認して、⑤だけが外れていることを固める
このステップでは、①〜④が「あり得る説明」かを確認し、⑤が浮くことを最終確認します。
- ③は、負荷変動(濃度の上下)が大きい場合に、ラグーン・調整槽でならして後段を安定化するという考え方で自然です。
- ④は、ビール排水のような高濃度有機排水に対して、前段にUASB等の嫌気処理を入れることで、好気の曝気動力と余剰汚泥を減らすという典型的な狙いで自然です。
- ①②は制度系の話で、細部の詰めは条文・自治体運用に依りますが、少なくとも「食品工場には特定施設に該当し得る設備がある」「小規模でも自治体側の枠組みで基準がかかる場合がある」という方向性は実務的に不自然ではありません。
一方、⑤は“清涼飲料=嫌気で分解しにくい”という、業種の一般像として逆方向の断定になっており、ここが最も不適当です。
問題のポイント
この問題のひっかけは、⑤の文章が「それっぽい理由」をつけて断定している点です。嫌気処理が苦手なのは、一般に「毒性物質が多い」、「難分解性(分解されにくい)成分が主体」、「高濃度の油脂や阻害物質が強い」といったケースです。
しかし、清涼飲料の排水は、多くの場合、糖類中心で“むしろ嫌気で分解しやすい側”に入ります。ですので、「嫌気で分解しにくいからUASB不可」という言い切りは、業種の典型像とずれており誤りになります。


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