
公害防止管理者の過去問|令和7年 ばいじん・粉じん特論 問12 問題と解説
問題12
アスベストモニタリングマニュアル(第4.2版)及び「作業環境測定ガイドブック1鉱物性粉じん・石綿」の規定に従って石綿繊維の計数を行う場合の、数の判定方法に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 単繊維の場合は、繊維状粒子を1本と数える。
- 枝分かれした繊維の場合、1本の繊維から枝分かれした部分を含む全体を1本と数える。
- 数本の繊維が交差している場合、全体を1本と数える。
- 繊維がからまって正確に数を読み取れない場合、数えない。
- 計数視野領域の境界内に繊維状粒子の両端が入っている場合は1本と数え、境界内に片方の端しか入っていない場合は1/2本と数える。
問題12の解答
正解は「3」です。
問題12の解説
本問は、「石綿繊維を顕微鏡下でどのように数えるか」という計数ルールの理解を問う問題です。数値計算や法令条文の暗記ではなく、公式マニュアルに定められた“考え方”を正確に再現できるかが試されています。
ここでの判断基準は、
- アスベストモニタリングマニュアル
- 作業環境測定ガイドブック1 鉱物性粉じん・石綿
に示されている、石綿繊維計数の公式ルールです。
解答に至るまでのステップ
ステップ1 「計数視野の境界の扱い」を確認する
このステップでは、まず「数える/数えない」「1本/1/2本」という判定が、どの基準で決まるかを確認します。なぜなら、本問の選択肢には「境界内に両端があるか/片端だけか」という、公式ルールそのものが含まれており、ここを確実に押さえると、他の選択肢(枝分かれ、複数本の扱い)も同じ発想で整理できるからです。
環境省「アスベストモニタリングマニュアル(第4.2版)」では、計数視野範囲の境界について、両端が境界内なら1本、片端のみ境界内なら1/2本、両端が境界外なら計数しないことが明示されています。このルールがあることで、「視野の切れ目での二重カウント/取りこぼし」を一定の手順で防げる、という意味があります。
ステップ2 「枝分かれ」と「複数本(2本・3本)」が区別されていることを整理する
次に、枝分かれの扱いと、複数本として数える扱いが、マニュアル上で別の概念として整理されている点を確認します。なぜなら、本問の誤り選択肢(交差を1本とする)は、受験者が「枝分かれ=1本」というルールを誤適用してしまう典型パターンだからです。
同マニュアルでは、図示により 「枝分かれ」は1本として扱う例が示される一方で、「2本」「3本」として数える例も併せて提示されています。この並列表現が意味しているのは、計数では「見た目が複雑だからまとめる」ではなく、同一繊維とみなせるか/独立した繊維が複数あるかで本数の概念が変わる、ということです。
ステップ3 「交差している状態」を“枝分かれ”ではなく“複数本の重なり”として判断する
ここで、誤り選択肢の「交差」を検討します。このステップで行うべきことは、交差を「1本の繊維が分岐している(枝分かれ)」と解釈してよいのか、それとも「複数の繊維がたまたま重なった(複数本)」と解釈すべきかを、計数ルールの思想に照らして判断することです。
交差は通常、起点が同一であること(同一繊維であること)が確認できないため、枝分かれとは別物として扱います。環境省マニュアルの図示では、枝分かれ(1本)と並んで、複数本として数える例(2本、3本)が明確に示されているため、交差のように複数繊維が関与する状態を「全体で1本」とまとめる説明は、マニュアルの示す枠組みに反します。
したがって、「交差している場合に全体を1本と数える」は誤り、と結論づけられます。
ステップ4 「数えない」扱いの一般原則を確認し、選択肢の妥当性を補強する
本問には「繊維がからまって正確に数を読み取れない場合、数えない」という選択肢があります。日本の指定テキスト(作業環境測定ガイドブック)側の規定が問題文に含まれていますが、少なくとも公的・学術的な公開資料としては、NIOSH(米国CDC配下)のPCM計数法(NMAM 7400)においても、計数規則の厳格な適用(曖昧な場合に恣意的にルールを混ぜないこと)が強調され、判別不能な状態での無理な計数は誤差要因となる、という考え方が示されています。
このため、少なくとも「判別不能なら無理に足し込まない」という方向性自体は、国際的な標準的手順とも整合的であり、本問の誤りは交差の扱いにあると判断しやすくなります。
問題のポイント
この問題で引っかかりやすいのは、「枝分かれ=1本」という正しい知識がある受験者ほど、交差でも「見た目がまとまっているから1本」と誤って一般化してしまう点です。特に初学者は、顕微鏡観察を経験していないと「交差」と「枝分かれ」を言葉の印象で同じに扱いがちで、そこで「複雑=まとめる」という誤った近道を取りやすくなります。
しかし、環境省マニュアルでは、枝分かれ(1本)と並んで、2本・3本として数える例が図示されているため、計数は「形が複雑だからまとめる」のではなく、独立した繊維の本数という概念で分けることが要点です。誤答選択肢が正しそうに見えるのは、「交差」を「同一繊維の分岐(枝分かれ)」だと脳内変換してしまうからであり、そこに受験者の典型的な思考の落とし穴があります。


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