
公害防止管理者の過去問|令和7年 大気・水質概論 問6 問題と解説
問題6
問6 酸性雨の主要な原因物質である硫酸と硝酸に関する記述として,誤っているものはどれか。
(1) 硫酸は,SO2を先駆物質とする二次汚染物質である。
(2) 硝酸は,NOxを先駆物質とする二次汚染物質である。
(3) 気相におけるSO2の硫酸への酸化速度は,NO2の硝酸への酸化速度よりも1桁近く大きいと推定されている。
(4) 硫酸,硝酸の生成メカニズムとして,気相でのOHとの反応,雲や霧の中での反応,粒子状物質上での反応などが挙げられる。
(5) 生成した硫酸,硝酸が大気中のアンモニアと反応して生成するエーロゾルや他の粒子状物質に付着した形で地上に降下する現象を乾性沈着という。
問題6の解答
正解は「3」です。
問題6の解説
酸性雨(広くは酸性沈着)は、主に二酸化硫黄(SO₂)や窒素酸化物(NOₓ)が大気中で酸化されて硫酸(H₂SO₄)や硝酸(HNO₃)になり、雨・霧・雪に取り込まれて落ちる(湿性沈着)/ガスや粒子として直接沈着する(乾性沈着)ことで起こります。 このうち、気相(大気中)での反応速度に着目すると、代表的な反応は
- NO₂ + OH → HNO₃(硝酸生成)
- SO₂ + OH →(中間体を経て)H₂SO₄(硫酸生成)
であり、反応速度定数は一般に NO₂の方がSO₂より約10倍大きい(= NO₂→硝酸の方が速い)と整理されます。 したがって、「SO₂→硫酸の酸化速度がNO₂→硝酸より1桁近く大きい」とする(3)は逆で、誤りです。
解答に至るまでのステップ
ステップ1:硫酸・硝酸が“二次汚染物質”であることを確認します。
SO₂やNOₓは排出源(工場・自動車等)から出る一次汚染物質で、光化学反応などで生じる酸化性物質(例:OHラジカル)により、硫酸・硝酸という強酸へ変換されます。 → よって(1)(2)は「先駆物質(前駆物質)をもつ二次生成」という方向性として正しいです。
ステップ2:(4)の生成メカニズムが妥当かを確認します。
硫酸・硝酸の生成は、
- 気相(OHなどとの反応)
- 雲・霧など液相(雲水・雨滴中)での反応
- 粒子表面での反応(不均一反応)
といった複数経路がある、という整理は公的資料でも一般的です。→ (4)は正しいです。
ステップ3:(5)の“乾性沈着”の定義と整合するかを確認します。
乾性沈着とは、雨や雪に取り込まれずに、ガス状または粒子状の物質が大気から直接地表へ沈着することです。 硫酸・硝酸がアンモニアと反応して硫酸塩・硝酸塩の粒子(エーロゾル)となり、粒子として地表へ沈着する形は、乾性沈着の説明として整合します。→ (5)は正しいです。
ステップ4:(3)の“反応速度の大小関係”を一次情報で確認します。
大学(国立大学法人)の教材的整理では、気相反応の速度定数が
- NO₂の酸化(硝酸生成):k ≈ 1.2×10⁻¹¹
- SO₂の酸化(硫酸生成):k ≈ 1.2×10⁻¹²
とされ、NO₂の方が約10倍速いことが明示されています。→ よって「SO₂→硫酸の方が1桁大きい」は逆で、(3)が誤りです。
問題のポイント
ひっかけの核:気相での反応速度は NO₂→硝酸 の方が SO₂→硫酸 より概ね速い(約10倍)。
一次汚染物質/二次汚染物質:
一次=排出源からそのまま出る(SO₂、NOₓなど)/二次=大気中反応で生成(硫酸、硝酸など)。
OHラジカル(OH):光化学反応で生じる代表的な酸化剤で、SO₂やNO₂を酸へ変換する中心役です。


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