
公害防止管理者の過去問|令和6年 ばいじん・粉じん特論 問4 問題と解説
問題4
サイクロンに関する記述として、誤っているものはどれか。
- 軸流サイクロンでは旋回流を起こさせる案内羽根(ベーン)部が最も摩耗する。
- 渦芯での旋回運動を半自由渦という。
- 圧力損失は入口ガス流速の2乗に比例する。
- ダスト濃度が増加するほど、圧力損失が減少する傾向がある。
- 一般に、入口ガス流速は7~20m/sの範囲にとられる。
問題4の解答
正解は「2」です。
問題4の解説
解答に至るまでのステップ
ステップ1 まず「サイクロン内部の渦の基本形」を原理として押さえます
サイクロン内部の旋回流は、代表的に ランキン渦(Rankine vortex)として説明されます。これは、
- 中心(渦芯)付近:強制渦(剛体回転) …
- 外側:自由渦 …
という「2つの渦が組み合わさった構造」です。この原理を基準にすると、「渦芯(中心部)」を何と呼ぶべきかが判断できます。
ステップ2 選択肢2を判定し、誤りの核を特定します(本問の山場)
2. 渦芯での旋回運動を半自由渦という。
→ 誤りです。
理由は次のとおりです。
- 渦芯(中心部)は上で整理したとおり 、強制渦(剛体回転)です。
- 「半自由渦(自由渦または半自由渦)」という言い方は、装置内に形成される渦の“型”として自由渦系を含む分類として説明されることが多く、少なくとも「渦芯(中心部)の運動そのもの」を指す呼称としては不適切です。
したがって、渦芯=半自由渦という断定は、渦構造(渦芯は強制渦)と整合しないため誤りになります。
ステップ3 残りの選択肢(1,3,4,5)を原理・根拠で順に正誤判定します
1. 軸流サイクロンでは旋回流を起こさせる案内羽根(ベーン)部が最も摩耗する。
→ 正しいです。軸流サイクロンは案内羽根(ベーン)で旋回を与えるため、粉じんを含む流れがベーン近傍を通過し、衝突・摩耗が問題になりやすい構造です。軸流サイクロン(案内羽根が関与する形式)に関する学術的整理の中でも、付着性・摩耗性粉じんに対して「摩耗」やその軽減が論点として挙げられています。
3. 圧力損失は入口ガス流速の2乗に比例する。
→ 正しいです。サイクロンの圧力損失は、基本的に動圧(∝ρu2)に支配されるため、入口流速の増加に対して概ね 2乗則で増えると整理されます。J-STAGE掲載のサイクロン研究でも、圧力(損失)が流量の2乗に比例する旨が述べられており、流量が一定断面なら流速に対応するため、実務上「入口流速の2乗に比例」と扱います。
4. ダスト濃度が増加するほど、圧力損失が減少する傾向がある。
→ 正しいです。粉体(固体)負荷が増えると、気相単独の旋回流れと比べて流れ場が変化し、圧力損失が低下するケースがあることが実験・研究で報告されています。例えば、固体負荷(solid loading)を増やすと圧力損失が減少する傾向が示されています。(※この現象は条件依存ですが、設問は「傾向がある」としており、一般論としては正しい範囲の記述です。)
5. 一般に、入口ガス流速は7~20m/sの範囲にとられる。
→ 正しいです。環境省の技術マニュアルでは、接線流入式サイクロンの入口ガス流速を「一般的に7~15 m/s」としています。 一方、実設計・研究では入口流速20 m/s程度を採る例も見られます(大学の公開論文で入口ガス流速20 m/sで寸法決定した記述など)。したがって、「7~20 m/s」という幅は、環境省資料の一般的範囲(~15)を含みつつ、上限側の設計例(~20)も含む表現であり、“一般にとられる範囲”として不自然ではありません。
問題のポイント
- サイクロンの渦は 中心が強制渦、外側が自由渦(ランキン渦)という基本形をまず思い出します。
- 「渦芯(中心部)」は 強制渦であり、ここを「半自由渦」と呼ぶのは渦構造とズレます。
- 圧力損失は動圧支配で 入口流速の2乗則が基本です。
- ダスト(固体)負荷が増えると圧損が下がる「傾向」が報告されており、断定ではなく“傾向”表現がポイントです。
- 入口流速は環境省資料で 7~15 m/sが一般的範囲として示され、設計例として 20 m/s級もあるため、7~20 m/sという選択肢は成立し得ます


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