
公害防止管理者の過去問|令和6年 水質概論 問9 問題と解説
問題9
有害物質の人の健康影響に関する記述として、誤っているものはどれか。
- セレンは、金属間相互作用により水銀の毒性を高める相乗効果が大きい。
- メタロチオネインはカドミウムなどの重金属と結合し、その毒性を弱める働きがある。
- シアン化合物は、細胞内ミトコンドリアのチトクロームオキシダーゼと結合し、細胞呼吸を阻害する。
- 農薬の有機りん剤は、アセチルコリンエステラーゼの働きを阻害する。
- 国際がん研究機関(IARC)の発がん性評価では、グループ1に分類された物質は「ヒトに対して発がん性がある」とされている。
問題9の解答
正解は「1」です。
問題9の解説
本問は、有害物質の作用機序(どこに結合して何が止まるか)と、生体防御機構(解毒・結合タンパク)、さらに IARC の発がん性分類の定義を問う典型問題です。誤りは 「セレンが水銀の毒性を高める(相乗効果が大きい)」と断定している 選択肢1です。
1.(誤っている:正解)
セレンは、金属間相互作用により水銀の毒性を高める相乗効果が大きい。
この記述は不適切です。一般に、セレン(Se)は水銀(Hg)に対して“拮抗(antagonistic)”=毒性を弱める方向に働くことが、公的機関の資料でも整理されています。
- 食品安全委員会の研究要旨では、セレンが in vivo で水銀に対して拮抗性(antagonistic property)を持つこと、さらに Hg と Se が相互作用して毒性が低い形(HgSe など)になるという考え方が示されています。
つまり、少なくとも「セレンが水銀の毒性を高める相乗効果が大きい」と一般論として述べるのは、一次情報に照らして誤りです(相互作用は複雑でも、“毒性低減側”が基本整理)。
2.(正しい)
メタロチオネインはカドミウムなどの重金属と結合し、その毒性を弱める働きがある。
メタロチオネイン(MT)は、カドミウム(Cd)などの金属と結合する金属結合タンパクで、細胞内で Cd を結合・隔離することで慢性毒性(特に腎毒性など)を緩和する役割があることが総説で整理されています。
3.(正しい)
シアン化合物は、細胞内ミトコンドリアのチトクロームオキシダーゼと結合し、細胞呼吸を阻害する。
シアンはミトコンドリア電子伝達系のシトクロムcオキシダーゼ(複合体IV)を阻害し、酸素利用による呼吸を止めます。毒性学の一次文献でも、急性毒性の主要機序がチトクロムcオキシダーゼ阻害であると説明されています。
4.(正しい)
農薬の有機りん剤は、アセチルコリンエステラーゼの働きを阻害する。
有機リン系(OP)農薬の基本作用は、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害であり、総説でも「一次機序として AChE を阻害する」ことが明記されています。
5.(正しい)
IARCの発がん性評価では、グループ1に分類された物質は「ヒトに対して発がん性がある」とされている。
IARC モノグラフの分類で Group 1 は “Carcinogenic to humans(ヒトに対して発がん性がある)”という定義です。IARC公式サイトの分類一覧でも Group 1 が “Carcinogenic to humans” と示されています。
また、IARCの定義(Group 1: The agent is carcinogenic to humans)は、厚生労働省資料にも引用されており、定義確認の補強として有用です。
問題を解くポイント
- ポイント1:金属間相互作用は“相乗”と決め打ちしない
セレン×水銀は「拮抗(毒性低減)」として整理されるのが基本。 - ポイント2:生体防御は“結合して無害化(隔離)”の発想
メタロチオネイン=Cdなど重金属を結合し毒性発現を抑える方向。 - ポイント3:機序問題は“標的分子”で覚える
- シアン:チトクロムcオキシダーゼ阻害→細胞呼吸停止
- 有機リン:AChE阻害→コリン作動性症状
- ポイント4:IARC分類は定義をそのまま押さえる
Group 1=Carcinogenic to humans。


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