
公害防止管理者の過去問|令和6年 水質概論 問7 問題と解説
問題7
富栄養化指標に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 植物プランクトンに利用されやすい窒素の形態は、硝酸体窒素やアンモニア体窒素の無機体窒素である。
- 硝酸体窒素は、魚類の呼吸酵素を阻害するなど毒性が強く、水産用水基準では、淡水域では1.9mg/Lの基準値が設定されている。
- 植物プランクトンに利用されやすいりんの形態は、溶解性のオルトりん酸体りんである。
- 湖沼や閉鎖性の海域で夏季に底層水が嫌気化すると、オルトりん酸体りんは底泥部から溶出して富栄養化を促す。
- 湖沼が富栄養化し、植物プランクトンの生産が活発になると、湖沼水のpH値が上昇する。
問題7の解答
正解は「2」です。
問題7の解説
本問は「富栄養化(=栄養塩類N・Pの増加により植物プランクトンが増殖しやすくなる現象)」に関連して、
- 植物プランクトンが利用しやすい窒素・りんの形態
- 底層の嫌気化によるりんの溶出(内部負荷)
- 光合成による pH 上昇
- “水産用水基準”における硝酸態窒素の位置づけ(毒性・基準値)
を問うています。
結論として誤りは 選択肢2 です。理由は大きく2点あります。
- 「硝酸態窒素は毒性が強く、魚類の呼吸酵素を阻害する」という説明は、一般に 亜硝酸態窒素(NO₂⁻)側の説明として知られる内容で、硝酸態窒素(NO₃⁻)を直接そう断定するのは不適切。
- 「水産用水基準(淡水域)1.9 mg/L」という数値が、公開されている“水産用水基準”の表と整合しない。
以下、選択肢ごとに根拠を示します。
選択肢1(正しい)
植物プランクトンに利用されやすい窒素の形態は、硝酸体窒素やアンモニア体窒素の無機体窒素である。
富栄養化関連項目の解説(国の水文・水質情報系の公的サイト)では、無機態窒素(硝酸態・亜硝酸態・アンモニア態)は植物の栄養素として直接利用される旨が説明されています。したがって、「硝酸態窒素」「アンモニア態窒素」が利用されやすい、という記述は妥当です。
出典URL: https://www1.river.go.jp/100307.html
選択肢2(誤っている:正解)
硝酸体窒素は、魚類の呼吸酵素を阻害するなど毒性が強く、水産用水基準では、淡水域では1.9mg/Lの基準値が設定されている。
「呼吸酵素の働きを阻害」「メトヘモグロビン血症」といった“酸素運搬阻害”の機序は、一般に硝酸そのものというより、体内等で硝酸が還元されて生じる亜硝酸(NO₂⁻)に強く関連づけて説明されます。
水質基準の解説資料でも、硝酸性窒素が体内で亜硝酸塩に代謝され、亜硝酸塩がメトヘモグロビンを生成して呼吸機能を阻害する、という整理が示されています。
出典URL: https://www.jwwa.or.jp/mizu/pdf/2002-kaisetsu.pdf jwwa.or.jp
さらに、水産分野の水質解説資料では、「硝酸態窒素は水産生物に対する毒性は強くはありません」と明確に述べた上で、水産用水基準値(淡水域・海域)を示しています。
出典URL: https://www.hro.or.jp/upload/35940/td6oqn0000000crj.pdf HRO
また、自治体が公開している「水産用水基準」の表では、硝酸態窒素の基準値は淡水域:9 mg/L、海域:7 mg/Lと整理されています。よって「淡水域 1.9 mg/L」という記述は、提示されている基準表と整合しません。
出典URL: https://www.pref.miyagi.jp/documents/52626/r5h2-4-2-9.pdf 宮城県公式サイト
以上より、選択肢2は「毒性の説明」「基準値」の双方の点で不適切であり、誤りです。
選択肢3(正しい)
植物プランクトンに利用されやすいりんの形態は、溶解性のオルトりん酸体りんである。
国土交通省系の河川水質の技術資料(リン化合物の解説)では、無機態リンとしてオルトリン酸態リン(PO₄-P)が主要であり、溶解性のオルトリン酸態リンは栄養塩として藻類に吸収利用され、富栄養化の直接的原因物質となる旨が明確に述べられています。
出典URL: https://www.mlit.go.jp/river/shishin_guideline/kasen/suishitsu/pdf/s09.pdf 国土交通省
選択肢4(正しい)
湖沼や閉鎖性の海域で夏季に底層水が嫌気化すると、オルトりん酸体りんは底泥部から溶出して富栄養化を促す。
同じ技術資料において、粒子性リンは沈降するが、富栄養化が進み底層水が嫌気化すると溶出して富栄養化を促進すると説明されています。これは「内部負荷(底泥からのリン溶出)」の基本事項です。
出典URL: https://www.mlit.go.jp/river/shishin_guideline/kasen/suishitsu/pdf/s09.pdf 国土交通省
選択肢5(正しい)
湖沼が富栄養化し、植物プランクトンの生産が活発になると、湖沼水のpH値が上昇する。
水資源に関する公的機関のQ&A資料では、富栄養化により藻類が著しく繁殖するとpHが上昇し(場合によっては9.5を超えることもある)こと、またその理由が藻類の光合成によるCO₂消費にあることが、機構(炭酸系平衡)も含めて説明されています。したがって本記述は正しいです。
出典URL: https://www.jwrc-net.or.jp/docs/publication-outreach/qa/11-21.pdf 公益財団法人 水道技術研究センター
問題を解くポイント
- ポイント1:富栄養化で“直接効く”栄養塩の形態を押さえる
- N:無機態窒素(例:硝酸態・アンモニア態)が利用されやすい。
出典URL: https://www1.river.go.jp/100307.html 国土交通省 水管理ポータル - P:溶解性のオルトリン酸態リンが最重要。
出典URL: https://www.mlit.go.jp/river/shishin_guideline/kasen/suishitsu/pdf/s09.pdf 国土交通省
- N:無機態窒素(例:硝酸態・アンモニア態)が利用されやすい。
- ポイント2:夏季の底層嫌気化=“底泥からリンが出る(内部負荷)”を定型知識として整理
出典URL: https://www.mlit.go.jp/river/shishin_guideline/kasen/suishitsu/pdf/s09.pdf 国土交通省 - ポイント3:硝酸(NO₃⁻)と亜硝酸(NO₂⁻)を混同しない
“呼吸阻害”の説明は亜硝酸に結びつく形で整理されるのが一般的で、硝酸を「毒性が強い」と断定するのは危険。
出典URL: https://www.jwwa.or.jp/mizu/pdf/2002-kaisetsu.pdf jwwa.or.jp - ポイント4:水産用水基準の数値問題は“表で確認”が最優先
硝酸態窒素は(公表表では)淡水域9 mg/L、海域7 mg/L。
出典URL: https://www.pref.miyagi.jp/documents/52626/r5h2-4-2-9.pdf 宮城県公式サイト


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