公害防止管理者は領域とレベルで13種類に分かれています。そのため、「どの領域で国家試験を受けるべきか?」という悩みを持っている人たちもいるかもしれません。
いうまでもなく、公害防止管理者は法律で配置が義務付けられている性質上、勤務先の状況に応じて適切な区分を選択すべきです。ただ、原則として受験資格に制限がないため、「今後のキャリアに活かす」という視点で受験を考えている人たちもいるでしょう。
本記事では、その立場にいる人を対象に「公害防止管理者の区分はどれがいい?」という疑問について考察しています。これから試験を受けようと考えている人たちは参考にしてみてください。
公害防止管理者の区分
公害防止管理者は、工場や事業場における大気汚染や水質汚濁などの環境負荷を防止するために選任が義務づけられている国家資格です。事業所の業種や規模に応じて必要な資格の種類が異なるため、資格は細かく区分されています。大きく分けて5つの分野に整理できます。
1.大気関係
工場のボイラーや焼却炉などから排出されるガスを規制対象とする区分です。
- 大気第1種〜第4種:施設の規模に応じて区分。第1種が最も広範囲・大規模。
- ボイラー・ディーゼル関係:燃焼設備やディーゼル機関に特化。
2.水質関係
排水処理設備を対象にした区分で、工場排水の水質汚濁を防ぎます。
- 水質第1種〜第4種:処理規模による区分。第1種が最大規模。
- 下水道関係:公共下水道に放流する施設を対象。
3.騒音・振動関係
建設工事や工場機械などから発生する騒音・振動を管理します。
- 騒音・振動関係:単一の区分で、騒音規制法や振動規制法に対応。
4.特定粉じん関係
アスベストなど健康被害の大きい特定粉じんを扱う事業場を対象とします。
- 特定粉じん関係:粉じん排出施設の管理に特化。
5.ダイオキシン類関係
ごみ焼却施設などで発生するダイオキシン類を対象とする区分です。
- ダイオキシン類関係:焼却炉や溶融炉に特化。
公害防止管理者の区分はどれがいい?
それでは、公害防止管理者を取得するにあたって、区分はどれがいいのでしょうか?
これに関しては、ご自身の状況に応じて取得した方がよい区分が異なるので、「これがいい」とは一概に言えません。
その上で、公害防止管理者の区分を決定するのに有用な基準は以下の3つであると言ってよいでしょう。
- 基準1 勤務先或いは就職先で配置が義務付けられている公害防止管理者の区分で選択する。
- 基準2 大気あるいは水質の区分に関しては自分の学習理解度に応じて1種から4種を選択する。
- 基準3 社会全体で資格取得者が少ない区分を選択する。
基準1に関しては、ご自身の仕事上で必要になる資格の区分を事前に確認しておくことでスムーズに選択できるでしょう。特定の条件に当てはまる場所には、公害防止管理者の設置が義務付けられているので、事業者からしても必要な資格を取得してくれる従業員はありがたい存在になるに違いありません。
基準2に関しては、大気と水質の区分は1種から4種に分かれており、数字が低いほど難易度が高くなると言われています。1種を目標にして4種から受けるという選択もありますし、自信があるなら1種に挑戦するのも良いでしょう。いずれにしても、過去問を解いた上で、現在の実力と伸び代を踏まえて適切な区分の試験を受けることをおすすめします。
基準3に関しては、基準1や基準2で決まらないならば、全ての区分の中から最も有資格者が少ないものを選ぶのも良いかもしれません。具体的には、 令和6年度の受験者数が最も少ないのは「公害防止主任管理者」の区分です。続いて、「一般粉塵関係」になります。
希少性の観点から他の公害防止管理者と差別化を図るという意味でも検討してみてはいかがでしょうか。
公害防止管理者の区分別難易度ランキング
それぞれの区分に関する難易度については得意・不得意の分野もあるため、領域別に優劣をつけて断じることはできません。ただ、「合格率の低さ」や「種別」という視点では、難しさについて一定程度の見解を述べることはできます。その前提で「公害防止管理者の区分別難易度ランキング」は以下の通りです。
★が多いほど難しい/合格率は令和期公開値の目安レンジ。
| 順位 | 区分名 | 合格率(令和目安) | 難易度 | 内容の特徴・難しさ |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 大気関係 第1種 / 水質関係 第1種 / 主任管理者最難関 | 15–25% | ★★★★★ | 複数科目・広範囲・計算力重視。燃焼・処理工学・法規・分析など全領域を網羅。 |
| 2 | 大気関係 第2種 / 水質関係 第2種 | 20–30% | ★★★★☆ | 上位種に次ぐ中核区分。計算と理論の両立が必要で、装置・法規の理解も求められる。 |
| 3 | 大気関係 第3種 / 水質関係 第3種 | 22–34% | ★★★☆☆ | 基礎力+実務知識を問う中堅クラス。応用問題もあり、油断できないレベル。 |
| 4 | 大気関係 第4種 / 水質関係 第4種 / 騒音・振動関係 / ダイオキシン類関係同列 | 25–40% | ★★★☆☆ | 入門〜中級レベル。範囲は限定されるが、用語・法令理解・基礎計算の正確さが鍵。 |
| 5 | 特定粉じん関係 | 30–40% | ★★☆☆☆ | 石綿など特定物質法規を扱う。範囲は狭いが法令用語の精度が問われる。 |
| 6 | 一般粉じん関係最も取り組みやすい | 30–45% | ★☆☆☆☆ | 範囲が限定的で、計算問題は少なめ。粉じん防止装置や基礎法令中心。 |
このランキングは受験者にとって区分の難易度を測るひとつの参考材料程度として理解してください。本質的には、個人の適性や学習の仕方によって難しさは異なります。
公害防止管理者は併願できる?
なお、公害防止管理者では複数の区分を併願できるのでしょうか?
結論から言えば、公害防止管理者の併願は可能です。
ただし、併願している区分で実施される試験は、それぞれ個別に受験しなければいけません。例えば、大気1種と水質1種を併願した場合、「公害総論」は両区分で共通している試験科目ですが、どちらか一方の試験を省略することはできないのです。すなわち、片方は0点扱いになります。
そのため、科目合格制度を活用しない限り、公害防止管理者の併願で合格することは困難であると言えます。科目合格制度とは、すでに合格している試験区分に含まれる試験科目と共通の科目が免除される仕組みです。区分に合格していない場合は、合格年を含め3年間は合格科目の試験が免除されます。いずれも受験者の申請が必要になるので注意してください。
上記を考慮すると、公害防止管理者を初めて受ける人にとって、併願は基本的に選択肢に上がらないと言えるでしょう。
決められないなら問題を解いてみよう!
もし、この記事を読んでも公害防止管理者の受験区分が決まらないのであれば、国家試験の過去問を一度、解いてみると良いでしょう。その際に、自分と相性の良い領域が見えてくるかもしれません。「これは頭に入ってこない……」という領域があれば、それを避けるという発想もあります。
「何となく国家試験を取りたい」という動機なら、むしろ今後、自分が貢献したい環境の領域を改めて見直すことも重要です。それなりの勉強時間が必要な試験ですから、意味もなく受けるのは「もったいない」という考え方もあります。
みなさんにとって公害防止管理者の受験がより良い人生の選択肢になることを祈っています。



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