公害防止管理者では、すべての区分で「公害総論」が試験科目になっています。そのため、受験を検討している人たちの中には、その難易度について懸念している人たちもいるかもしれません。実際のところ、公害総論は難易度の高い内容なのでしょうか?
この記事では、「公害総論は難しいのか?」という疑問への考察を踏まえて、試験対策のポイントやおすすめの勉強法、おすすめのテキストも紹介していきます。これから公害防止管理者の国家資格を取得しようと考えている人たちは参考にしてみてください。
公害総論の概要
公害総論は、公害防止管理者試験において全区分に共通して出題される基礎科目です。一般社団法人産業環境管理協会の資料によれば、公害総論の出題範囲は次のように定められています。
- 環境基本法及び環境関連法規の概要に関すること
- 特定工場における公害防止組織の整備に関する法律体系に関すること
- 環境問題全般に関すること
- 環境管理手法に関すること
- 国際環境協力に関すること
過去問を見ると、条文に記載されている細かい文言の違いを問われることが多いので、単なる暗記ではなく、各項目の背景を含めて理解しておく必要があります。
公害総論は難しい?
それでは、実際に「公害総論」の試験は難しいのでしょうか?
大前提として、試験の難易度は個人の学習状況や得意分野によっても変わります。その上で、公害総論は知識の正確さを確認する問題が出題される傾向が高いため、暗記が得意な人にとっては決して難しいものではありません。逆に、覚えるのが苦手な人にとっては苦戦する可能性があると言えるでしょう。
過去を見ると、出題範囲は広いものの、意地悪な問題を思考力で解決するような問題はありません。問題の形式は2つに分かれています。問題例も次に引用しているので、確認してみてください。
(問題例)
環境基本法の目的および基本理念に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 環境基本法は、環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進するための基本となる事項を定めている。
- 環境の恵沢を将来の世代へ継承することは、本法の基本理念の一つである。
- 環境の保全は、自然的および社会的条件に応じて適正に行われなければならないとされている。
- 環境の保全は、主に国や地方公共団体の責務であり、国民には明確な責務は規定されていない。
- 本法は、環境の保全を通じて健康で文化的な生活を確保し、人類の福祉に寄与することを目的としている。
問題の答え 4
(問題例)
環境基本法第2条第3項に定める「公害」の定義に関する次の文中の空欄(ア)〜(ウ)に当てはまる語句の組み合わせとして、正しいものを選べ。
「この法律において『公害』とは、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる(ア)、(イ)、(ウ)、騒音、振動、地盤の沈下、悪臭などにより、人の健康または生活環境に係る被害が生ずることをいう。」
| 選択肢 | ア | イ | ウ |
|---|---|---|---|
| 1 | 大気の汚染 | 水質の汚濁 | 土壌の汚染 |
| 2 | 水質の汚濁 | 大気の汚染 | 放射能汚染 |
| 3 | 大気の汚染 | 放射能汚染 | 廃棄物汚染 |
| 4 | 廃棄物汚染 | 水質の汚濁 | 騒音 |
| 5 | 土壌の汚染 | 大気の汚染 | 水質の汚濁 |
問題の答え 1
出題範囲に関する知識とその背景を学習すれば、決して難しすぎる内容ではありません。とにかく試験と同じ形式の問題をたくさん解いて、実力を磨いていくことを推奨します。
公害総論の試験対策の仕方
さて、公害総論の試験対策は、どのような視点で臨むのが適切なのでしょうか?
ここでは、合格者の傾向から分析した3つのアプローチを紹介します。
対策1 問題を解いてわからないことを可視化する
第1に、公害総論では、条文の正確な文言や用語の定義を細かく問われるので、過去問や演習問題を繰り返して解いて「わからないこと」を可視化することが重要です。
結局のところ、教科書や参考書を読む「インプット」はテスト問題を解く「アウトプット」で結果を出すために実行することです。そのため、インプットに注力するよりも試験問題をたくさん解いて、間違えた問題を整理して、常に実力を確認したほうが良いでしょう。
また、誤答の原因を「知らなかった」ではなく、「なぜその選択肢を間違えたのか?」まで分析することが、構造的に理解を深める近道です。
対策2 言葉ではなく意図を理解する
第2に、公害総論の出題範囲は広いので、条文の言葉だけではなく意図を理解することで問題の正解を導きやすくなります。
また、条文の言葉を丸暗記するだけでは、本番で似た表現に惑わされる危険があります。だからこそ、「なぜそう定められているのか?」という法の目的や背景の意図を理解することで微妙なニュアンスの文言にも迷わずに回答できるようになるわけです。
実際、専門家として言葉だけしかわかっていないのは可能性を狭めるリスクもあります。学習スケジュールとの兼ね合いにもよりますが、プロになるための学びと学習効率を中長期的にアップさせるためにも、問題の答えに込められている意図を踏まえておくことを推奨します。
対策3 本番と同じ環境でテストする
第3に、試験直前期には、できる限り本番環境に近い条件で模擬試験を行うことが効果的です。時間制限(60分)を設定し、机の上に置く資料を制限し、問題を一気に解く練習をしましょう。
「テストと同じ環境で実力を発揮できるかどうか?」を確かめることで日頃の学び方の有用性を測ることができます。勉強しているのにも関わらず、点数が全然伸びないならば、何かを根本的に変える必要があるわけです。それを本番になってわかるのは勿体無いですよね。
公害防止管理者の試験は年に一度しかなたいため、一生懸命に努力してきた受験者ほど当日はとても緊張しているはずです。だからこそ、場数を踏んでおいた方が良いと思います。高校や大学の受験でも模試があるように、テストを受けること自体を練習することで実力を発揮しやすくなるでしょう。
公害総論のおすすめテキスト
参考書を購入する金銭を出すのが嫌な人たち向けに現在、解説付きの演習用プログラムを組んでいますので、今しばらくお待ちくださいませ。
著者(編著): 公害防止の技術と法規編集委員会 – 出版社: 産業環境管理協会(発売: 丸善出版) – 発売年: 2025年
公害防止管理者試験の公式テキストにあたる非常に総合的な参考書です。自分の区分に適したシリーズを選んでください。試験問題を作成している産業環境管理協会が編纂しており、試験に出る知識はほぼこの一冊に書かれているといわれるほど出題と直結しています。
説明文がそのまま試験問題文に使われることも多く、信頼性は抜群です。
一方で約1,200ページにもおよぶ分厚い内容から受験者には「電話帳」とも称され、定価も約1万円と高価です。初心者が最初から通読するには現実的でないため、辞書的に調べ学習に使うのがおすすめです。過去問演習で出会った不明点を本書で調べることで、試験範囲を的確に補完できるでしょう。
編著者: 産業環境管理協会 – 出版社: 産業環境管理協会 – 発売年: 2024年
公害総論科目に特化した過去問題集+要点整理本です。広範囲な公害総論の試験範囲から重要ポイントを厳選し、それに関連する過去問を解く構成になっています。効率重視の内容になっており、膨大な公式テキストを読む時間がない場合や試験対策の急所をまず押さえたい場合に最適です。
A5サイズで約160ページとコンパクトながら、頻出分野の解説と良問がバランス良く収録されています。問題ごとの解説は簡潔ですが、出題傾向に沿ったポイント整理のおかげで短時間で重要事項の習得と演習ができます。
公式の過去問集ではありませんが、試験機関(産業環境管理協会)による編纂で信頼性が高く、初学者~中級者が効率的に合格ラインを目指すのに役立つ一冊です。
一般社団法人産業環境管理協会が国家試験を管理している以上、その団体が出版している本を使うのが最も適切であると言えます。
勉強法は問題を解き続けること
公害総論の試験問題は良くも悪くも知識を正しく覚えていることが重視されています。だからこそ、問題を解き続けることが最も正答率を向上させる勉強法です。もちろん、人によって学習の仕方は異なりますから、自分に適した選択を取るのが良いに違いありません。
とはいえ、社会人で資格試験に挑戦する場合、仕事や家庭に関わるやるべきことがある中で限られた時間を効率よく活用して合格しなければいけないので、容量よく学習スケジュールを組まないと範囲の勉強が終わらないなんてこともあるはずです。
これから演習問題を解説付きで公開しようと思いますので、是非とも公害総論の対策で役立ていただけると幸いです。みなさんにとって充実した試験勉強になることを祈っています。



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