実のところ、一部の例外を除いて、野焼きは法律で禁止されています。そのため、近隣住民の中には、「野焼きを見つけたら通報する」という手段を取る人たちもいるわけです。
煙や悪臭は生活環境を脅かす大きな要因になるので、当然の対応と言えばそれまでなのですが、通報された側としては、「その後どうなるのか?」が心配になりますよね。
この記事では、野焼きで通報された後に起きることや逮捕の可能性について言及しています。罰金の事例も紹介しているので、参考にしてみてください。
野焼きは違法なのか?
結論から言うと、野焼きは原則として違法行為です。これに関しては、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法)第16条の2項で次のように定められています。
(焼却禁止)
e-govより引用
第十六条の二 何人も、次に掲げる方法による場合を除き、廃棄物を焼却してはならない。
一 一般廃棄物処理基準、特別管理一般廃棄物処理基準、産業廃棄物処理基準又は特別管理産業廃棄物処理基準に従つて行う廃棄物の焼却
二 他の法令又はこれに基づく処分により行う廃棄物の焼却
三 公益上若しくは社会の慣習上やむを得ない廃棄物の焼却又は周辺地域の生活環境に与える影響が軽微である廃棄物の焼却として政令で定めるもの
野焼きで発生した大量の煙や臭気は周辺で暮らしている人たちの健康被害に加えて、洗濯物を汚すなど生活上のトラブルを引き起こします。さらに、低温燃焼によってダイオキシンなどの有害物質が出る危険性があります。
こうしたリスクを踏まえて、廃棄物処理法が改正されて、特定の条件を満たさない野焼きは全面禁止となったのです。もし、この法律に違反した場合、5年以下の懲役又は1,000万円以下の罰金またはこれらの両方が課されると言う厳しい罰則が規定されています。
野焼きで通報されたらどうなる?
野焼きを通報された場合、警察や消防が現場に来て焼却を止め、その後違反行為として調査・処理されるのが一般的な流れです。ここでは通報後の対応を3つの段階に分けて説明します。
その1 警察や消防隊が駆けつける
第1に、目撃通報があると警察官や消防隊が現場に駆け付けます。
違法な野焼きであると認められれば、直ちに消火・焼却中止が命じられます。もっとも、その場でいきなり現行犯逮捕される可能性は低いと言われています。
警察が現行犯逮捕を行うには逃亡や証拠隠滅のおそれが必要であり、野焼き行為自体が確認されても違反者が素直に指示に従う限り、その時点で逮捕に踏み切るケースは稀だからです。その意味では、通報により現場に警察が来ても落ち着いて指示に従いましょう。
その2 警察が捜査を開始する
第2に、野焼きが違法だった場合は警察による操作が実施されます。
具体的に言うと、現場で身分確認や事情聴取が実施され、違反が明確になったら後日改めて警察署に出頭するよう求められる可能性があるのです。この出頭要請を無視したり、拒否したりすると、逃亡や証拠隠滅のおそれがあると見なされて、逮捕されるリスクが高くなるので注意してください。
以上のことからも、違法な野焼きを指摘された場合は必ず呼び出しに応じて、誠実に事情を説明することが大切なのです。
その3 処罰手続きが実行される
第3に、捜査結果に基づいて、警察が違反者を法の定めに従って処罰するための手続きを実行します。
事件が検察庁に書類送検されて、裁判所で略式の手続きを経て罰金刑が課されるケースが多いと言われています。実際に、少量のごみ焼却だったとしても有罪になって、数十万円の罰金を支払った事例が出ています。野焼きで起訴された場合は懲役刑よりも高額な罰金刑で決着することが一般的なのです。
とはいえ、刑事処分には変わりません。要するに、犯罪者として裁かれるわけです。したがって、「注意で済むだろう」と安易に考えるのは禁物です。
野焼きで逮捕される可能性は本当にあるのか?
とはいえ、野焼きで通報された人たちのなかには、「実際に逮捕されるなんて聞いたことがない」と思っている人たちもいるはずです。実際のところ、警察に捕まえる可能性はあるのでしょうか?
これに関しては、捜査を担当する警察の判断によるため、一般論として述べられませんが、状況によっては逮捕もあり得るでしょう。
とはいえ、初犯の野焼きでその場で拘束されるケースは極めて稀です。違反者が逃亡しない、かつ証拠隠滅のリスクも低ければ、警察は現場での任意対応に留める可能性が高いと考えられます。
けれども、悪質な常習犯や規模の大きい野焼きを繰り返した場合、警察が逮捕に踏み切った事例は存在します。例えば、東京都では、長年にわたって産業廃棄物を野焼きしていた業者に対して、警視庁が廃棄物処理法違反の容疑で当該企業の社長以下3名を逮捕しています。この事件では、住民からの苦情を受け東京都が17回にわたり行政指導していたにもかかわらず7年間で約488トンもの廃棄物を焼却していたため、異例の逮捕に至ったものです。
このことから、悪質性が高いと判断されれば、逮捕も現実に起こり得るため、「絶対に逮捕されない」とは言い切れません。
野焼きで罰金を支払わされた事例
それでは、野焼きで罰金を支払わされた事例は存在するのでしょうか?
ここでは、代表的な3つの事例を紹介します。
事例1 自宅近くで廃木材を焼却し50万円の罰金
山口県下関市の男性(61歳)が、自宅近くの空き地で丸太や枝など約500キロを焼いていたところ発覚しました。男性は事前に消防署へ「焼却する」と連絡していましたが、それでは法的な許可にはならず違法野焼きに該当します。
下関簡易裁判所は2013年9月、男性に罰金50万円の略式命令を言い渡しました。消防署への届け出を理由に無罪を主張しましたが、「消防署は野焼きの許可権限を持たない」としてその主張は退けられています。
事例2 町職員が家庭ごみを焼却し40万円の罰金
岡山県矢掛町の病院職員だった男性(52歳)は、所有する畑で自宅の木箱やむしろ等およそ50キロのごみを燃やし、近隣からの通報で摘発されました。警察が廃棄物処理法違反容疑で書類送検し、2015年5月、管轄の簡易裁判所が罰金40万円の略式命令を出しています。
この男性は公務員だったため、町は「住民に野焼き禁止を呼びかける立場上、厳正に対処せざるを得ない」として減給10分の1(2か月)の懲戒処分も科しました。
事例3 少量のごみ焼却でも有罪・罰金
北海道内のあるケースでは、自宅敷地や畑で家庭ごみ(紙くず・枝等)を焼却しただけでも罰金20万円の刑が科されています。
別の事例では家庭ごみや剪定枝の焼却で罰金50万円が命じられた例もあり、決して「少しなら大丈夫」というものではありません。
これらは法改正以降、全国で実際に起きている判決例であり、野焼きがれっきとした犯罪であることを示しています。
悪質な野焼きは逮捕される
野焼きは、法律により原則禁止された行為であり、安易な気持ちで行えば刑事罰を招くリスクがあります。通報された場合、現場で即逮捕される可能性は低いものの、その後の捜査で違法と認められれば最終的に前科が付く罰金刑に処せられるケースが多いのが実情です。
例外的に燃やせる場合であっても周囲への配慮は欠かさず、ごみ処理は法律や自治体の指導に従い、自治体の収集や適切な処分方法を利用するようにしましょう。




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