エネルギー管理士に実務経験は必要?内容や具体例、ないときの対処法

エネルギー管理士に実務経験は必要?内容や具体例、ないときの対処法
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実のところ、エネルギー管理士の国家試験に特定の受験条件はありません。すなわち、だれでも国家試験に挑戦できる環境が整っているわけです。とはいえ、環境技術に関する国家資格である以上、資格保有者の実務経験が重視されることはいうまでもありません。

この記事では、「エネルギー管理士に実務経験は必要なのか?」という疑問について考察しています。実務経験の内容や具体例、ないときの対処法も紹介しているので、これから「エネルギー管理士を目指そう」と考えている人たちは参考にしてみてください。

目次

エネルギー管理士に実務経験は必要なのか?

さて、エネルギー管理士になるにあたって、実務経験は必要なのでしょうか?

結論から言えば、エネルギー管理士として働くためには1年以上の実務経験が必要です。『エネルギー管理士の試験及び免状の交付に関する規則』では、エネルギー管理士の国家試験合格者に対して免状を交付する条件として、次のように定められています。

(合格者に対する免状の交付)
第六条 経済産業大臣又は指定試験機関は、試験に合格しエネルギーの使用の合理化に関する実務に一年以上従事した者に対して、免状を交付する。

エネルギー管理士の試験及び免状の交付に関する規則より引用

冒頭でも述べたように、実務経験は試験を受ける条件として課されているわけではありません。しかし、試験に合格しても実務経験がなければ、「免状保有者」として扱われないので注意してください。

受験者にとって、「せっかく受かったのに免状がもらえない」のはモチベーションを下げる大きな要因になると考えられます。しかし、エネルギー管理士の資格保有者の量と質をバランスのよく担保する上で、受験資格に実務経験はいらないけど、免状発行には必要とするのは絶妙に適切な設計です。

資格はあるけど現場のことは全くわからないでは、「エネルギー管理士」という権威ある国家資格が形骸化するリスクもあります。その意味では、実務経験を積むことを前提に目指すことが大切なのです。

エネルギー管理士に求められる実務経験の内容

それでは、エネルギー管理士に求められる実務経験の具体的な内容について確認していきましょう。

エネルギー管理士に必要な実務経験とは、エネルギーの消費や合理化に関する設備を対象とした維持、運用改善、監視に関する業務を指します。これに関しては、『エネルギー管理士免状の交付申請に関するQ&A』に以下のとおり明記されています。

ここでいう実務とはエネルギーを消費する設備及びエネルギーの使用の合理化に関する設備の
維持並びにエネルギーの使用の方法の改善及び監視をいいますので対象となる設備(以下の設
備の例を参照)とその実務内容(運転・操作・管理・監督等)を記載してください。なお、エ
ネルギーマネジメントシステムを使用し、遠隔制御によりエネルギーを消費する設備及びエネ
ルギーの使用の合理化に関する設備の運転・操作・管理・監督等を行っているものも実務に含
めます。

エネルギー管理士免状の交付申請に関するQ&Aより引用

対象設備の具体例としては、ボイラーや冷凍設備、空気調和装置、受電・変電・配電設備などが想定されています。一方で、照明の単なるスイッチの切り替えや、診断・提案、設計、施工・工事など納品・納入に関わる実務は対象外とされています。

以上のことを踏まえたうえで、エネルギー管理士の免状交付要件として認められる実務経験のポイントは次のように整理できます。

エネルギー管理士の実務経験に関して知っておくべきポイント

  1. ポイント1 対象設備は熱(ボイラー・冷凍・空調等)と電気(受変電・配電等)で幅広く、EMS遠隔監視でも運転・管理・監督を継続し、設備名と担当期間を明記できれば実務に含まれます。
  2. ポイント2 実務は熱・電気どちらかで1年以上あればよいとされ、指定工場か否かも問われないため、強みの設備に絞り、成果物を定型化して継続運用の責任範囲を作るのが最短ルートです。
  3. ポイント3 照明は単純なON/OFFでは認められにくいとされるため、点検・保全・制御設定・巡回記録まで含めて担当し、月次で成果をまとめて維持・管理の証拠を一定期間分残します。
  4. ポイント4 施工・設計・診断・提案など納品・納入に対する業務は対象外とされるため、実稼働設備の運用・保全・監視に一定期間関与し、担当範囲が分かる記録と成果物を確実に残します。

実務経験の具体例

ここでは、実務経験として認められる具体例を紹介していきます。

自分の職務履歴が実務経験として認められるかどうかが不安な方は、一般財団法人省エネルギーセンターに確認してください。

具体例1 食品工場

食品工場のユーティリティ部門に所属するAさんは、3台の貫流ボイラーと工場全域にわたる蒸気供給網の運用管理を主導しています。Aさんは、日々の燃料消費量、給水量、蒸気発生量をBEMS(ビル・エネルギー管理システム)を通じて詳細に計測し、生産量あたりの蒸気原単位を算出することで、エネルギー消費の異常検知に努めています。

ある時、排ガス温度が基準値よりも上昇していることをデータから読み取り、空気比の過剰による熱損失を特定しました。そこで、O2センサーを用いた燃焼調整を自ら実施し、空燃比を適正化することでボイラー効率を1.5%向上させました。

さらに、蒸気輸送工程での損失を防ぐため、スチームトラップの超音波診断を定期的に行い、不具合箇所の交換工事を計画・実行。これによりドレン回収率を高め、給水温度の向上による燃料削減を達成しました。単なる設備の維持ではなく、計測データに基づく改善サイクルの確立を実務として継続しています。

具体例2 精密機械工場

精密機械工場の電気主任技術者をサポートするBさんは、特別高圧受変電設備および各棟への配電系統の保守・運用管理を担当しています。Bさんは、高圧受電点のデマンド監視装置を用いて30分ごとの電力需要を常に監視し、夏季や冬季のピーク時間帯における電力使用状況を詳細に記録・分析しています。

デマンド値が目標を超過しそうになった際には、生産ラインの空調機や大型コンプレッサーの稼働を一時的に抑制するピークカット運用をマニュアル化し、現場への指示系統を確立しました。

また、受電点の力率が低下して配電損失(抵抗損)が増大するのを防ぐため、負荷変動に応じた進相コンデンサの自動投入設定を最適化し、常に力率98%以上を維持する運用管理を行っています。

さらに、経年劣化した変圧器をトップランナー方式の高効率変圧器へ更新する際の仕様策定や、更新後の無負荷損低減効果の計測・検証までを一貫して担い、電力使用の合理化を推進しています。

具体例3 商業ビルの管理

大規模商業施設の管理センターに勤務するCさんは、施設内の空気調和装置、冷凍機、および冷却塔の集中監視・運用管理に従事しています。Cさんは、BEMSから得られる外気温度、室内温度、CO2濃度などの環境データと、空調機・ポンプの消費電力量の相関を日々解析し、過剰な空調エネルギーの投入を防ぐ運用を行っています。

具体的には、中間期における外気冷房の導入条件をBEMS上で最適化設定し、冷却水の温度設定を外気湿球温度に応じて動的に変更する「冷却水温度シフト制御」を導入しました。これにより、冷凍機の搬送動力を大幅に低減させる改善を実現しています。また、空調機インバータの周波数制御を末端圧感応方式へと変更する工事に立ち会い、施工後の省エネ効果を実測データに基づいて評価します。

不特定多数が利用する施設において、快適な室内環境を維持しつつ、エネルギー消費量を最小限に抑えるための計測・監視・設定変更のプロセスを実務として積み重ねています。

エネルギー管理士の実務経験がないときの対処法

とはいえ、エネルギー管理士の実務経験がなくても免状を得られない人たちもいるはずです。その場合は、どのような対処を講じればよいのでしょうか?

ここでは、3つの視点から対応について検討していきます。

方法1 実務経験の定義を確認し直す

第1に、エネルギー管理士の免状交付が認められる実務経験の定義をチェックし直して、「本当に該当しないのか?」をもう一度確認しましょう

実のところ、実務経験として認められる期間は資格取得の前でも後でも問題ありません。もし、対象期間の読み間違えをしているならば、再確認で該当していることに気づける可能性があります。

方法2 前職と現職の合算で計算する

第2に、エネルギー管理士の実務経験として満たさなければいけない1年という期間は、前職と現職を合わせた時間でよいとされています。これに関しては、『エネルギー管理士免状の交付申請に関するQ&A』にも明記されています。

Q19 実務従事期間は前の職場と現職場と合計して1年以上あればよいか。
A19 エネルギーの使用の合理化に関する実務従事期間を合算して1年以上あれば問題ありません。
その場合は従事期間等を併記し、それぞれどちらの職場の内容かが分かるように記載してくだ
さい。なお、実務従事証明を二つの職場(代表者(証明者)が異なる場合)で証明してもらう
場合、証明書は2通必要となります。(併記する際の記載例はP11をご参照ください。)

エネルギー管理士免状の交付申請に関するQ&Aより引用

そのため、職務経歴を振り返って、もう一度足し直してみてください。引用にもあるとおり、証明書が前職分も必要になるので注意しましょう。辞めるにも円満退社しないといけないわけです。

方法3 職種を選び直す

第3に、方法1や方法2で実務経験の要件を満たせないのであれば、職種を選び直すしかありません。歯がゆいかもしれませんが、エネルギー管理士として働くならば、だれしもが通らないといけない過程なので割り切って前に進む以外にないです。

具体的には、エネルギー関連設備の管理・ユーティリティ運用など実務に当たりやすい仕事へ移ることを検討しましょう。対象は「指定工場に入れるか?」ではなく「実稼働設備の維持・改善・監視に関われるか?」で選び、証明書に書ける設備名と業務名が持てる職場を優先します

焦らずに経験を積むことが重要!

エネルギー管理士として働くならば、試験対策で培った知識に加えて、実務経験に裏打ちされた技術を身につけることが大切です。特に、省エネ法改正によって「非化石エネルギーの転換」や「需要に応じた供給設計」など、エネルギー管理士として対応できる範囲も拡張しつつあります。

「実務経験がないから無駄だ」と諦めるのではなく、これから自分が携わりたい方向を具体化した上で、必要な実務経験を積める職場を選択しましょう。1年という期間はエネルギー管理のプロとしての技術を習得するには短いです。だからこそ、どのみち修行は必要になるわけです

今の自分が満たせる条件だけではなく、これからの自分が手に入れられる条件も視野に入れたうえで資格取得をきっかけに自分の働き方を飛躍させる道を開拓するために、「腰を据えて関与できるか?」を自らに問いかけることから始めてみてください。

エネルギー管理士に実務経験は必要?内容や具体例、ないときの対処法

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本記事の監修者

1990 年生まれ。慶応義塾大学福澤諭吉文明塾 CP7期生。公共法政策修士(東北大学)。 研究分野はレジリエンスの社会政策。2017年より東日本国際大学・福島復興創世研究所の准教授として福島復興の研究及び環境回復・経済復興・心の復興に係るプロジェクトに携わる。2019年より独立し、オウンドメディアの開発・運用、データ解析、SEO対策などマーケティングに関わるサービスをワンストップで提供。バンタンクリエイターアカデミー、KADOKAWAドワンゴ情報工科学院の講師。福島県総合計画審議委員会の審議員を歴任。

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