公害防止管理者の水質1種・2種・3種・4種の難易度と過去問の傾向

公害防止管理者の水質1種・2種・3種・4種の難易度と過去問の傾向
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公害防止管理者の水質区分を受験しようと考えている人たちの中には、各種の難易度について気になる方もいるはずです。確実に合格したいのならば、勤め先からの要請に加えて自分の実力に適した試験を受けるべきですよね。実際のところ、水質の区分は難しいのでしょうか?

この記事では、公害防止管理者の水質1種・2種・3種・4種の難易度について考察しています。また、それぞれの区分で出題される科目の過去問に関する傾向にも言及しているので、これから資格を取ろうと考えている人たちは参考にしてみてください。

目次

水質区分の試験範囲

公害防止管理者の水質区分では、それぞれどのような問題が出題されるのでしょうか?

公害防止管理者の国家試験を運営している一般社団法人産業環境管理協会が公開している資料によれば、水質区分の試験範囲は以下のとおりです。

試験科目出題内容出題数
水質概論(1)水質汚濁防止対策のための法規制に関すること
(2)水質汚濁の現状に関すること
(3)水質汚濁の発生源に関すること
(4)水質汚濁の機構に関すること
(5)水質汚濁の影響に関すること
(6)国又は地方公共団体の水質汚濁防止対策に関すること
10問
汚水処理特論(1)汚水等処理計画に関すること
(2)物理・化学的処理法に関すること
(3)生物的処理法に関すること
(4)汚水等処理装置の維持・管理に関すること
(5)測定に関すること
25問
水質有害物質特論(1)有害物質の性質と処理に関すること
(2)有害物質含有排水処理施設の維持・管理に関すること
(3)有害物質の測定に関すること
15問
大規模水質特論(1)水質汚濁物質の挙動に関すること
(2)処理水の再利用に関すること
(3)大規模設備の水質汚濁防止対策の事例に関すること
10問

各種で出題される科目は次のように設定されています。水質1種が最も試験科目が多く、4種が科目が少なくっています。

区分試験科目
水質1種公害総論・水質概論・汚水処理特論・水質有害物質特論・大規模水質特論
水質2種公害総論・水質概論・汚水処理特論・水質有害物質特論
水質3種公害総論・水質概論・汚水処理特論・大規模水質特論
水質4種公害総論・水質概論・汚水処理特論

公害防止管理者の水質1種・2種・3種・4種の難易度

それでは、各水質区分の難易度はどれくらいなのでしょうか?

試験範囲の広さから考えれば、水質1種が最も難しく、水質4種が最も優しいと言えます。水質2種と水質3種の難易度は科目数的には同じくらいです。なお、それぞれの合格率は以下のとおりです。

水質区分の種別合格率

区分合格率
水質1種30.9%
水質2種18.2%
水質3種24.2%
水質4種18.3%

合格率は水質1種が最も高い結果となっています。これは試験内容が難しいことから受験者のレベルが高いことに加えて、過去に合格した試験が免除される科目合格制度の活用も影響していると考えられます。

総合的に考えると、公害防止管理者試験の合格基準は全科目で60%以上を正解しなければいけません。しかし、水質概論や大規模水質特論は合計で10問しか出題されないので、間違えて良いのは4問までです。そう考えると、難易度は比較的に高いと考えられます。

水質区分の過去問に関する傾向

それでは、水質区分の過去問に関する傾向について紹介していきます。ここでは、令和元年から現在に至るまでの試験内容を分析して問題の性質についてまとめていきます。

水質概論の過去問傾向

水質概論は全10問出題される科目で、水質汚濁防止法や水環境に関する基礎知識が問われます。近年は細かい法令の条文や時事的なトピックまで幅広く出題されており、試験関係者の中でも難易度が高い科目とされています。

実際、試験問題の形式はほとんどが「次の記述のうち誤っているものはどれか?」というパターンで、一見細かな引っかけを含む正誤問題が中心です。過去問を分析すると、以下のような問題形式が多く見られます。

問題タイプ 内容・特徴
正誤判定問題 特定のテーマに関する複数の記述から、誤っている記述や正しい記述を選ぶ形式。法律や環境基準の説明文中の下線部の正誤を問う問題が典型で、法令用語や数値のわずかな違いを見抜く正確さが求められます。
空欄補充(組み合わせ選択)問題 法令や基礎知識の文章に空欄があり、正しい語句の組み合わせを選択。例:「排出水を排出する者は、その(ア)が当該(イ)の(ウ)において(エ)に適合しない排出水を排出してはならない。」など、専門用語の理解が鍵。
該当・非該当の分類選択問題 基準やカテゴリに対し「該当する/しない」を選ぶ形式。「水質汚濁防止法に規定する有害物質でないものはどれか」など、法令上の定義の正確な理解を確認します。
データ・数値に関する問題 環境基準値や統計データなどの数値をもとに正誤を問う問題。グラフや表から正しい値を読み取るものもあり、環境基準の具体的な数値や制定年など細部の記憶が重要です。
事象と対策に関する問題 水質汚濁に関する事象に対し、原因や適切な対策を選択する形式。富栄養化・地下水汚染・大腸菌群など、現実的な環境問題に対する理解が問われます。
化学式や計算に関する問題 化学反応式や基本的な計算(汚濁負荷量・単位変換など)を扱う問題。公式の意味と単位を理解していれば対応可能です。
細かな知識・用語を問う問題 法令改正や新規追加項目など、細部の知識を問う問題。PFOSや大腸菌数の追加など、最新の時事的トピックにも注意が必要です。

水質概論では、法令・基準に関する正誤問題が中心であり、細かな数字や用語、時事的内容まで幅広く問われます。そのため、「丸暗記科目」とも称され、過去問演習を繰り返して知識を頭に叩き込む以外に攻略法がないと言われるほどです。難問も多い科目ですが、裏を返せば出題パターンは毎年似通っているため、過去問から傾向を掴んで対策しましょう。

汚水処理特論の過去問傾向

「汚水処理特論」は全25問とボリュームが多く、下水・産業排水の処理技術について幅広く出題されます。範囲が広いため一見難しそうですが、深掘りした超難問は少なく、過去問で頻出の基礎を押さえれば合格点に達しやすい科目です。

出題形式は水質概論と同様に誤っている記述肢を選ぶ問題が大半ですが、計算問題やプロセスに関する問題も含まれます。過去問の分析から、特に次のような傾向が見られます。

問題タイプ 内容・特徴
処理プロセスの正誤問題 排水処理技術に関する基本原理や各処理法の特徴について、正しい記述・誤った記述を選ぶ形式です。「活性汚泥法では微生物による有機物の酸化分解が行われる」などの正誤を判断し、物理的・化学的・生物的処理の原理と適用例を理解しているかを確認します。
計算問題(数値計算問題) 毎年数問出題される傾向があります。BOD負荷、容積負荷、沈降時間、F/M比などの基本計算や、冷却水系のブロー水量計算などが頻出。公式を正確に使えば解ける「サービス問題」が多く、得点源です。
運転トラブルと対策の問題 排水処理で起こる異常現象やその対策を問う問題です。例として「活性汚泥の膨張」「嫌気タンクでの悪臭」など、原因と適切な対応を選択。汚泥膨化・泡沫発生・処理水濁りなど、現場トラブルの知識を整理しておくことが重要です。
適切な処理法の選択問題 汚染物質や排水特性に応じた処理法を選ぶ問題です。窒素除去、重金属処理、中和、イオン交換など、対象に合った方法を判断。各処理法の除去対象や特徴を理解しておく必要があります。
処理フロー・装置構成に関する問題 排水処理の工程や装置構成を理解しているかを確認。「曝気槽→沈殿槽→消毒→放流」など工程順序の正誤や、再利用方式(局部的・工場単位・地域的再生利用)の理解が問われます。全体のフローを把握することがポイントです。
幅広いテーマからの出題 凝集剤・消毒剤の特性、下水道法、水再利用、メンブレン法など、幅広いテーマから出題。深い専門性よりも「広く浅く」理解しているかを重視。過去問で頻出のテーマを中心に、最新技術の概要も押さえておくと安心です。

汚水処理特論では、幅広い知識の網羅と計算問題の確実な得点がカギです。過去問演習を通じて頻出テーマを把握し、特に毎年出る計算問題は確実に解けるようにしておきましょう。範囲は広いものの難問奇問は少なく、過去問をしっかり理解すれば十分に合格可能な科目です。

水質有害物質特論の過去問傾向

「水質有害物質特論」は全15問で、水質汚濁防止法で規制される有害物質の分析・処理に関する知識が問われます。

化学に関する内容が多いため一見とっつきにくい科目ですが、出題パターンは毎年似ており過去問と同じような問題が繰り返し出題される傾向があります。しっかり暗記と演習を積めば得点源にしやすい科目と言えるでしょう。主な問題の形式は以下の通りです。

問題タイプ 内容・特徴
有害物質処理法の正誤問題 重金属や有機化合物など、有害物質ごとの処理技術や反応機構に関する記述の真偽を問う問題。
例:「共沈法に関する説明のうち誤っているものを選べ」「イオン交換法での陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂の違い」など。
中和沈殿・硫化沈殿・活性炭吸着など各処理法の原理と注意点を正確に理解しているかが鍵です。
処理プロセス・薬品選択問題 特定の有害物質処理に使用する薬品や工程の順序を問う問題。
例:「六価クロム排水の処理フローにおける薬品A~Cの正しい組み合わせ」では、硫酸・亜硫酸ナトリウム・水酸化ナトリウムなどの正しい投入順を答えます。
有機水銀排水処理では酸化剤選定など、薬品の特性理解も求められます。
分析手法の個別問題 各有害物質の検定方法を問う頻出問題。
例:「六価クロムの検定に用いられる方法はどれか」→正解はジフェニルカルバジド吸光光度法。
公式分析法(例:シアン=ピリジン・バロ酢酸法、ほう素=メチレンブルー法)を暗記しておく必要があります。
物質と分析法の組み合わせ問題 有害物質と検定方法の正しい組み合わせを問う形式。
例:「アルキル水銀-水素化物発生原子吸光法」「ヒ素-ジチオカルバミド酸銀光度法」「ほう素-メチレンブルー法」などの正誤を判断します。
頻出ペアを覚えれば得点源となるサービス問題です。
規制物質と基準に関する問題 技術問題に加え、関連する法規的知識を問う出題。
例:「排水基準が定められていない項目はどれか」「農薬〇〇に対しガスクロマト法が定められているか」など。
有害物質リストや毒性・生物蓄積性など、広い知識が求められます。
化学的知識の応用問題 化学の基礎を応用する問題。
例:「リスク評価における閾値・TDI・不確実係数」や「重金属の酸化状態による処理法の違い」など。
環境化学や機器分析の基本を理解していれば対応可能です。

水質有害物質特論では、毎年ほぼ決まったパターンで出題される問題を確実に押さえることが合格への近道です。全ての有害物質・分析法を覚えるのは大変ですが、頻出の組み合わせや基本的な処理法は「サービス問題」として得点しやすいので確実に習得しましょう。

大規模水質特論の過去問傾向

「大規模水質特論」は全10問で、水質汚濁の大規模施設・広域的な対策に関する内容や、大規模な工場における排水処理について問われます。出題傾向として、以下のような問題が中心です。

問題タイプ 内容・特徴
水域環境に関する総合問題 閉鎖性水域や富栄養化など、広域的な水質汚濁現象についての正誤を問う問題。
例:「富栄養化が進んだ閉鎖性海域」に関する記述では、水交換の悪化・成層・貧酸素水塊の形成などの理解を確認。
また、「表層溶存酸素量が環境基準に追加された」など、環境基準項目や総量規制の知識も問われます。
数値モデル・シミュレーションに関する問題 水質予測モデルや生態系モデルなど、数値解析を扱う問題。
例:L-Q式による負荷量推定、拡散方程式、流体力学モデルとの連携、生態系モデルでの光制限項(LTLIM)など。
専門的だが毎年出題される定番テーマで、公式テキストに沿った理解が有効です。
広域対策・再利用に関する問題 広域的な汚濁防止策や水再利用に関する問題。
例:局部的・工場単位・地域的再生利用の3分類の特徴と普及度を問う設問。
細かな数値よりも、概念・分類・用語の正確な理解が重視されます。
計算問題 冷却水や循環水など、工場ユーティリティ設備に関する計算。
例:「濃縮倍数と蒸発量・飛散量からブロー排水量を求める」など。
計算式は単純(例:ブロー率=(蒸発+飛散)/(R−1))で、基本公式の理解で解けます。
産業別の排水処理工程問題 鉄鋼・石油・製紙・食品など産業ごとの排水処理プロセスを問う定番問題。
例:製鉄所の直接冷却水と間接冷却水の処理、製油所のプロセス排水フロー、製紙工場でのリン・窒素添加など。
過去問の焼き直しが多く、覚えておくと得点源になります。
その他(施策・監視・統計) 総量規制指定水域の成果や、環境基準達成率などに関する知識を問う問題。
例:瀬戸内海・東京湾の負荷削減データ、達成状況など。
出題テーマは安定しており、過去問10年分で傾向を掴めます。

大規模水質特論は、過去問学習の効果がもっとも出やすい科目です。毎年同じ産業分野・同じテーマからの出題が多いため、過去問を分析して頻出事項(富栄養化対策、モデル計算、各業種の処理工程など)を押さえれば高得点が期待できます。水質1種の他科目に比べ対策が立てやすいので、ここで確実に6問以上正解して科目合格を勝ち取りましょう。

問題を解き続けることが合格のカギ

公害防止管理者の水質区分は出題範囲が広いため、覚えることがたくさんあります。そのため、量をこなさないといけないのが難点です。しかし、過去問を分析すると、極端に傾向が変わるといったこともないので、同じ形式の問題を解き続けることが合格の近道であると言えます。

社会人の方は、仕事と家庭でやるべきことがある中での挑戦になるかと思います。だからこそ、効率よく学ぶための準備が大切です。資格の有無によって、自分の将来が大きく拓けるケースもあります。ISEEDでは、過去問を分析した演習問題やデモテストを今後公開する予定です。みなさんの資格勉強がより充実するよう祈っております。

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本記事の監修者

1990 年生まれ。慶応義塾大学福澤諭吉文明塾 CP7期生。公共法政策修士(東北大学)。 研究分野はレジリエンスの社会政策。2017年より東日本国際大学・福島復興創世研究所の准教授として福島復興の研究及び環境回復・経済復興・心の復興に係るプロジェクトに携わる。2019年より独立し、オウンドメディアの開発・運用、データ解析、SEO対策などマーケティングに関わるサービスをワンストップで提供。バンタンクリエイターアカデミー、KADOKAWAドワンゴ情報工科学院の講師。福島県総合計画審議委員会の審議員を歴任。

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